研究課題/領域番号 |
23790345
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 龍洋 北里大学, 薬学部, 助教 (70547893)
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キーワード | mTOR / Rheb |
研究概要 |
栄養センサーとして働くmTORは、生体機能の維持に重要な役割を果たすが、そのメカニズムはまだ不明な点が多い。私たちは初年度にスクリーニングを行い、mTORにより制御されると考えられる候補因子をいくつか同定した。また、mTOR複合体2 (mTORC2)に結合すると考えられるタンパク質を1つ同定した。そこで、本年度(2年目)にはこれらのタンパク質が実際にmTORの下流で働き、細胞内において機能するか検討した。 1. 初年度に見出した複数のmTORC1ターゲット候補因子について、これらのタンパク質精製を行い、mTORC1により直接リン酸化される因子の検討を行った。その結果、2つの因子が直接リン酸化されることを明らかにした。また、細胞内にmTORC1活性化因子であるRhebを発現させてLC-MS/MS解析を行い、リン酸化制御を受けるアミノ酸残基の候補を見出した。 2. mTOR複合体2 (mTORC2)に結合するタンパク質について解析を行ったところ、そのタンパク質がmTORC2によりリン酸化されることを見出した。また、細胞内の運動先端においてmTORC2と共局在することを明らかにした。 3. mTORのシグナル伝達経路をさらに詳細に調べるため、mTORC1活性化因子であるRhebの結合タンパク質を探索した結果、新規因子としてCADを同定した。CADは細胞内ヌクレオチド合成に重要な役割を果たすタンパク質であり、mTORC1のタンパク質合成促進作用と協調的に働き、細胞の増殖、がん化に関与する可能性が新たに示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に見出した新規候補タンパク質の解析が進み、これらの因子が実際にmTORによりリン酸化制御されているデータが得られた。また、mTORC2結合タンパク質については、mTORC2と結合して細胞運動の制御に関与する可能性が示唆されるデータを得ている。さらに、Rhebの新規結合因子が見つかっている。これらの解析をさらに進めることで、新規mTORシグナル伝達経路の解明、その意義が明らかになることが期待でき、本研究がおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.mTORC1の新規基質については、mTORC1によりリン酸化されるアミノ酸残基の特定を試みる。また、このリン酸化により基質にどのような変化がもたらされるか、また細胞機能への影響等について検討する。 2.新規mTORC2結合タンパク質については、mTORC2との結合により細胞運動にどのような変化がもたらされるか、さらにそのメカニズムについても検討していく。 3.新規Rheb結合タンパク質CADについては、CAD活性の変化、および細胞内ヌクレオチド量の変化について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で見出した因子のリン酸化について、それがmTORによるものかをより詳細に検討するため、試験管内のリン酸化反応実験を行う必要がある。、また培養細胞を用いて、実際に生理的条件下でリン酸化されるかについても慎重に検討する必要がある。さらに次年度においては、これら因子による細胞内機能の制御について検討を行っていく予定である。このため、遺伝子、タンパク質解析に必要な試薬、細胞培養関連試薬に研究費を使用する予定である。 また、データを論文にまとめ、投稿するのに必要な経費にも研究費を使用する予定である。
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