マイオスタチンはTGF-βファミリーに属するサイトカインであり、骨格筋量を減少させる作用を有する。このため、マイオスタチン遺伝子の欠損は骨格筋の著しい肥大を引き起こす事が知られている。我々は、マイオスタチンKOマウスの骨格筋において発現が変動する複数のmicroRNAの同定に成功している。本研究では、これらのmicroRNAによる骨格筋量調節作用を解析するとともに、microRNAを利用して新たな筋疾患の治療法を開発する事を目指した。 マイオスタチンKOマウスの骨格筋では、IGF-1/Akt経路の活性化に関わるmiR-486の顕著な発現増加が認められたため、本研究ではmiR-486の解析を中心に研究を進めた。前年度までの研究から、miR-486がC2C12細胞の筋管の直径を増加させるという知見が得られている。そこで本年度は、microRNAの生合成に必須なDicer1を阻害した場合に生じる筋管への影響を精査した。その結果、siRNAによりDicer1の発現を阻害する事で、C2C12細胞の筋管の直径が減少する事が明らかとなった。また、Inhibitorを用いてmiR-486の機能を阻害した場合にも同様の結果を得ている。本年度はこの他に、バイオインフォマティクスを用いてPTEN遺伝子を標的とするmicroRNAの探索を行い、新たにmiR-93を同定した。興味深い事に、PTENタンパク質の減少が観察された週齢のマイオスタチンKOマウス特異的にmiR-93の発現増加が観察された。また、C2C12細胞における解析から、miR-93の遺伝子導入によっても筋管の直径が増加する事が確認された。以上の結果から、miR-486やmiR-93等のmicroRNAが、マイオスタチンKOマウスで見られる筋肥大に関与している可能性が示唆された。
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