研究課題/領域番号 |
23790350
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研究機関 | 滋賀県立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
谷垣 健二 滋賀県立成人病センター(研究所), 神経病態研究部門, 専門研究員 (70362473)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Notch / active avoidance / neuron / RBP-J / striatum / instrumental learning / 転写因子 |
研究概要 |
Notch シグナルは神経系、造血系をはじめとし、様々な細胞の運命決定を制御すると同時に、側方抑制のメカニズムを通じてパターン形成に関与することが知られている。 Notch シグナルに異常が起こると発生自体が多大な影響を受け胎生致死となるため、現在に至るまで成体神経機能におけるNotchシグナルの役割はほとんど解析されていなかった。我々は、Notch シグナルの重要な伝達因子である転写因子RBP-Jのfloxed mice を樹立し、CamKII-cre transgenic mice を掛け合わせることで成熟神経細胞特異的にRBP-J を欠損したマウスを作製し、網羅的行動学的解析を行なった。神経特異的RBP-J 欠損マウスでは、海馬と扁桃体を必要とするinhibitory avoidance では異常を認めないが、active avoidance task では顕著な学習障害を認めた。shuttle box を用いたactive avoidance taskでは光/音のconditioned stimulus (CS) と電気ショックのunconditioned stimulus(US) を関連付ける海馬、扁桃体依存的association learning だけでなく、隣の部屋へ移動することで能動的にUSを回避することを記憶するという線条体依存的なinstrumental learning が必要とされる。このことから、Notch/RBP-J シグナルは線条体依存的なinstrumental learningに必要ではないかと考えられる。現在、Notchシグナルを可視化できるtransgenic mice を樹立し、線条体におけるNotch 活性化領域を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹立されたNotch シグナルを可視化できるマウスは、胎児期におけるNotch シグナルの可視化のみならず、成体における神経新生においてNotch シグナルが可視化できることを確認した。 成体の神経細胞におけるNotch reporter gene の発現は、神経発生時におけるその発現と比較すると非常に微弱なため、さらなる検討を必要としているため。
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今後の研究の推進方策 |
線条体依存的なinstrumental learningは、ドパミンに依存した学習であることが知られている。 申請者は、RBP-Jによるドパミン反応性制御の分子機構の解明を試みる。第一に、RBP-J欠損による線条体におけるドパミン放出、ドパミン反応性の変化が起こるかを検討するために、神経特異的RBP-J conditional knockout mice を用いて、in vivo microdialysis を行う。 次に、申請者はRBP-Jを欠損した線条体のマイクロアレイ解析を行い、ドパミン シグナルに関与する情報伝達系の遺伝子群の発現が変化しないかを検討する。 その効果がRBP-J 欠損の直接的影響によるものか、間接的なものかを明らかにするためにChIP seq を行なうことでRBP-J が線条体で結合するゲノム領域を網羅的に検討する。最後に、 線条体での遺伝子変化が、RBP-J の線条体での機能欠損によるものかを検討するために、Cre発現レンチウイルスを線条体に感染させてRBP-Jを生体内で欠損させた後、マイクロアレイで変化が見られた遺伝子群の発現量ががどのように経時的に推移するかの定量化実験を行う。以上の実験により、Notchシグナルによるドパミンシグナル関連分子の発現制御の分子機構の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
RBP-J欠損による線条体におけるドパミン放出、ドパミン反応性の変化が起こるかを検討するために、神経特異的RBP-J conditional knockout mice を用いて、in vivo microdialysis を行うことを計画している。このために、Eicom社製 オートサンプリングインジェクターを購入する。
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