研究課題/領域番号 |
23790354
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松永 耕一 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20570162)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
代表者は調節性分泌経路におけるRab27aを中心とした分子メカニズムを調べるため、様々な分泌細胞内(膵β細胞、膵α細胞、メラノサイト、肺腺がん細胞)でのRab27a結合たんぱく質の網羅的探索をおこなった。これにより特異的に結合するたんぱく質を数十種以上同定し、各分泌細胞に特異的な結合たんぱく質も多数発見された。これは様々な分泌細胞間で、Rab27aを介した分泌経路における必須のメカニズム(分泌細胞間で共通の結合たんぱく質)と、細胞の特異性を発現させるメカニズム(分泌細胞間で異なる結合たんぱく質)がある可能性を示唆する知見であり、現在詳細な分子機構を解析中である。分泌細胞の一つである膵β細胞において、Rab27aが他の複数のRab GTPaseと結合することを見出した。さらに代表者はそれらのRabに対しても特異的に結合するたんぱく質の網羅的解析も行い、Rab27aとそれらRabと双方に結合するデュアルエフェクターたんぱく質を同定した。詳細な結合、局在解析により、二種類のRab GTPaseはこのデュアルエフェクターを介して一つの複合体として細胞内に存在し、インスリン顆粒に局在することがわかった。さらにインスリン分泌を増強することが知られているPKAとPKCが、このデュアルエフェクターたんぱく質をリン酸化し、異なる複合体を形成しているという知見を得ている。加えてノックダウンによりこれら複合体の発現を抑制すると、刺激に依存したインスリン分泌が低下するというデータも得ている。これらのことから、この複合体はRab27aが機能するといわれている分泌過程において重要な役割があることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
代表者は平成23年度の研究計画(1)ー(4)について研究を遂行した。まず計画(4)に従い、様々な分泌細胞内(膵β細胞、膵α細胞、メラノサイト、肺腺がん細胞)でのRab27a結合たんぱく質の網羅的探索を行い、特異的に結合するたんぱく質を数十種以上同定し、分泌細胞ごとに特異的な結合も多数発見された。予想よりも遥かに多くの「細胞特異的結合たんぱく質」が発見され、Rab27を介した調節性分泌機構の分子メカニズムは、分泌細胞毎に多彩になっていることが予想できた。次に同定された結合たんぱく質の機能解析を行うため、計画(2)に従い、アデノウイルスを利用したノックダウン系の確立を行った。これまでに膵β細胞において複数の結合たんぱく質においてノックダウン系が確立し、詳細な機能解析を行うことが可能となっている。計画(1)については、膵β細胞によって発見された、Rab27aとデュアルエフェクター複合体(「研究実績の概要」参照)の複合体様式と細胞内局在を調べた。二つのRab GTPaseはデュアルエフェクターを介して三者複合体になっていることがわかり、さらに免疫蛍光染色法による局在解析では、この複合体はインスリン顆粒に局在していることが明らかになった。計画(3)については、膵β細胞におけるRab27a結合たんぱく質として同定された、新規Rab27a不活性化たんぱく質(Rab-GAP)候補について、in vitroでの不活性化能解析を行うための組み替えたんぱく質作成を、大腸菌を用いた系で行っている。このように研究計画はおおむね予定通りに遂行しているが、本研究によりRab27を介した分泌メカニズムは非常に多彩で複雑であることが明らかになり、さらに新規の複合体がインスリン分泌に重要な働きのあることを見出し、本研究課題は予定の計画よりも進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
様々な分泌細胞で網羅的に同定されたRab27a結合たんぱく質がどのような複合体を形成しているかを、免疫沈降法を用いた結合解析によって系統的に調べる。さらに分泌細胞特異的な複合体をあぶり出し、機能解析をする。平成24年度研究計画に従い、膵β細胞で同定された新規複合体成分のノックダウンや強制発現を用い、インスリン顆粒の成熟、分泌、分解の各過程での関与を細かく解析していく。全反射顕微鏡を用いてインスリン顆粒のドッキングと融合の過程に影響がないかも調べる。またこの複合体がどのような結合様式をしているのかを組み替えタンパク質をもちいたin vitro結合解析によって調べる。さらに複合体成分であるデュアルエフェクターはPKCやPKAによってリン酸化を受けていることを見出している。分泌細胞がどのような状態になったときにこのリン酸化がおき、そしてどのような機能を持っているかを詳細に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、細胞培養器具や培地、試薬などの消耗品が主な研究費の使途になる。平成24年度へ繰り越す金額が生じたが、これは前年度に予定していた、使用期限のある試薬などの購入を次年度に見送ったためである。さらにこれまでに得られたデータを国内外の学会等に発表するための旅費や、論文投稿のための費用にも使用する。
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