研究課題/領域番号 |
23790356
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北 芳博 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (20401028)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 脂質 |
研究概要 |
本研究は、申請者が発見した脳におけるcPLA2α非依存的な新規エイコサノイド産生経路について、関連酵素および受容体遺伝子の遺伝子欠損マウスを用いた脂質メタボロミクスによる解析・生理学的解析手法により、脳神経系固有の新規脂質メディエーター産生経路の詳細なメカニズムとその生理的意義を明らかにすることを目指すものである。申請者は、リポポリサッカライド(LPS)によって誘発される発熱がジアシルグリセロールリバーゼ(DGL)αおよびモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)の各酵素の欠損によりどのように影響されるかの評価を実施した。その結果、MGL欠損マウスにおいては発熱反応が見られなくなり、DGLα欠損マウスでは発熱反応は野性型と同様に起こることが明らかとなった。申請者のこれまでの知見では、脳における2-AG産生は大部分がDGLαに依存することが分かっていたが、今回、発熱反応においては、視床下部において、MGL依存かつDGLα非依存の2-AG産生分解系が存在することが予備的に示唆された。この結果は、海馬においてカイニン酸誘発性のcPLA2α非依存的エイコサノイド産生が、DGLα依存的かつMGL部分依存的であったことと対照的である。即ち、脳におけるcPLA2α非依存エイコサノイド産生経路には、DGLα依存性および非依存性のものが存在するということが新たな仮説として浮かび上がってきた。今後、これらの代謝経路が存在する細胞種(神経細胞・血管内皮等)の詳細を特定するために初代培養系などを用いた実験が必要となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画では、新規エイコサノイド産生経路のLPS発熱反応における意義を、各種遺伝子欠損マウスを用いて評価することを主たる目標として設定しており、これについては、MGL依存性、DGLα非依存性を明らかとすることができ、充分な進捗があったと考えている。一方、体温ホメオスタシスについて、体温の概日変動などを測定することも計画しており、これについては、まだ結果を得ていないが現在実施中である。これらを総合し、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
LPS誘発発熱モデルにおいて、DGLα非依存/MGL依存であることが明らかとなったため、このような様式でPGE2を産生する視床下部の細胞腫を特定することが重要となった。これについては、神経細胞および血管内皮細胞の初代培養系等を用いた検討を行うこととする。同時に、平成24年度の計画として挙げている新規エイコサノイド産生経路の中枢性疼痛メカニズムへの関与の検討も同時進行で行う。DGLα依存性エイコサノイド産生の生理的意義を明らかとすることを目標とし、これにより、脳におけるcPLA2α非依存性新規エイコサノイド産生経路が複数存在することの意義を明らかとする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、主として、遺伝子改変マウスおよび初代培養細胞を用いた新規エイコサノイド産生経路の解析のための、各種試薬、プラスチック消耗品、分析カラム等に充当する予定である。また、研究成果を発表するための学会参加費等にも充てる予定である。
|