本研究は、申請者が発見した脳におけるcPLA2α非依存的な新規エイコサノイド産生経路について、関連酵素および受容体遺伝子の遺伝子欠損マウスを用いた脂質メタボロミクスによる解析・生理学的解析手法により、脳神経系固有の新規脂質メディエーター産生経路の詳細なメカニズムとその生理的意義を明らかにすることを目指すものである。申請者は、リポポリサッカライド(LPS)によって誘発される発熱がジアシルグリセロールリバーゼ(DGL)αおよびモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)の各酵素の欠損によりどのように影響されるかの評価を実施した。その結果、MGL欠損マウスにおいては発熱反応が見られなくなること、DGLα欠損マウスでは発熱反応は野性型と同様に起こることが分かった。発熱反応においては、視床下部において、MGL依存かつDGLα非依存の2-AG産生分解系が存在することが示唆された。H24年度は、さらにLPSによるサイトカイン産生(即時相)を評価し、MGL欠損マウスにおいてLPSによる発熱性サイトカインの産生は野生型同様に起こることを確認した。また、MGL欠損マウスにPGE2を脳室内投与すると野生型マウス同様に発熱応答が見られることを確認し、MGL欠損マウスはLPSによる視床下部PGE2産生が起こらないために発熱しないという仮説を強く示唆する結果を得た。
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