研究課題
これまでの解析から、いくつかの乳がん細胞株において、インスリン様成長因子IGF2の刺激によりsphereが形成されることを見出している。Sphereはがん幹細胞様の細胞から形成されると考えられているため、IGF2は乳がん幹細胞の増殖制御機構に深く関わっている可能性がある。この現象をさらに検証するために、乳がん患者由来の臨床検体細胞を用いた実験を行なった。その結果、解析を行なった4名の患者細胞すべてにおいて、IGF2はsphereの形成を促すことが確認された。このことはIGFシグナルが乳がん細胞のsphere形成に普遍的に関わることを示す結果である。またIGF2で処理したMCF7細胞と無処理群のマイクロアレイ解析を行い、IGF2の刺激によって発現変化する遺伝子singatureを同定した。このsignatureと患者予後との相関を解析すると、がんの再発や転移と関わっている事がわかった。さらにIGF2刺激によりID3の発現が強く上昇することを見出し、ID3をノックダウンするとsphereの形成が阻害されることから、IGF2シグナルはID3を介してsphere形成を誘導していることが示唆された。以前の我々の研究ではErbBシグナルが乳がん幹細胞の維持/増殖において重要であることを明らかにしているが、今回のIGF2シグナルの発見はがん幹細胞制御における増殖因子シグナルの重要性を再確認させるものである。これらの知見をもとにいくつかの共同研究を進めた結果、EGFRのリガンドであるepiregulinもglioblastomaのsphere形成能を促進することが分かった。これらの結果は増殖因子シグナルをターゲットとしたがん幹細胞標的療法を確立する必要性を示すものであると考えられる。
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Neuro Oncol.
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