研究課題
偽性低アルドステロン症II型は、特定疾患にも指定されている難病であり、低レニン性高血圧症と共に、精神発達遅延、身体の奇形を伴った症状を示す常染色体優性の遺伝病である。その原因遺伝子として、WNKキナーゼが単離され、腎臓においてナトリウムやカリウムの共輸送体を制御していること、その制御異常が高血圧症の原因となることが既に示された。しかしながら、腎臓での制御異常が精神発達遅延や身体の奇形といった症状の原因とは考えられず、共輸送体の制御機構以外にもWNKが機能を持っていることが考えられている。我々は、新たに転写因子Lhx8がWNKの下流で機能していることを見出した。Lhx8が口腔部の形成やアセチルコリン作動性神経の発生において重要な機能を果たしていること、PHAIIの患者において歯や骨の発育不全や精神発達遅延などの症状が現れることを考えると、非常に重要な因子であり、原著論文として発表した(PLoS One, 2013, 8: e55301)。平成24年度においては、前年度に引き続き、WNK関連遺伝子の探索を行い、最終的に計78系統を得ることができた。それらの系統の原因遺伝子の単離を試み、その中の一つとしてNLKを得た。NLKのショウジョウバエ相同遺伝子nemoとショウジョウバエのWNK(DWNK)が遺伝的相互作用を示すこと、NLKがWNKを、及びnemoがDWNKを直接リン酸化することから、NLKがWNKシグナル伝達経路に関わる新規遺伝子であることが判明し、解析を続行している。また、いくつかの転写因子を単離できたことから、今後それらの転写因子が関連するシグナル伝達経路とWNKシグナル伝達経路とのクロストークなど、関連を解析していきたい。また、これらの新規WNK関連因子の解析から、偽性低アルドステロン症II型の発症メカニズムの解明、及び創薬の可能性についても探っていきたい。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e55301
doi:10.1371/journal.pone.0055301
巻: 8 ページ: e60865
doi:10.1371/journal.pone.0060865