哺乳1日齢のラットプロテオグリカン画分に含まれる主たるKS/CSPGはホスファカンであることを明らかにした。さらに反応性アストロサイトから分泌されるKS/CSPGも、ホスファカンであった。この結果はホスファカンが真なる軸索再生阻害因子であることを強く示唆する。次にホスファカンが真なる軸索再生阻害分子であるか否かを明らかにするため、タグ融合型リコンビナントホスファカンを作製した。Fc融合型ホスファカンの発現ベクター(PMFc)を構築し、COS-1細胞に対して強制発現した。培養上清からFc融合型ホスファカンを精製し、抗KS抗体でイムノブロットを行った。その結果精製したホスファカンはKS鎖を有していることが明らかになった。また、このホスファカンはコンドロイチナーゼABC処理によって分子量が低下することから、コンドロイチン硫酸も有していることが明らかになった。一方で、KS鎖が結合すると推測される領域を欠損させたホスファカン(PFc)をCOS-1細胞に対して強制発現させるとKS抗体に対する反応性が失われた。興味深いことにこのホスファカンはコンドロイチナーゼABC処理によって分子量が低下することから、コンドロイチン硫酸は有していると考えられた。すなわち、ホスファカン上におけるコンドロイチン硫酸とケラタン硫酸の結合部位は異なる可能性が示唆された。最後にCS鎖とKS鎖の両者をもつホスファカン、CS鎖のみをもつホスファカンを用いて、小脳顆粒細胞に対する軸索伸長阻害効果を調べた。興味深いことに、CS鎖とKS鎖の両者を持つホスファカンは、CS鎖のみを持つホスファカンに比べ軸索伸長阻害活性が強いことが明らかになった。この結果はホスファカン上のCS鎖が軸索伸長を阻害するという先行研究を支持するだけでなく、ホスファカン上のKS鎖がCS鎖に匹敵する軸索伸長阻害因子であることを新たに報告するものである。
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