研究概要 |
ガングリオシド欠損グリア細胞の性状解析のため、以下の検討を行った。 野生型(WT)及び、ガングリオシド欠損マウス(GD3合成酵素ノックアウト(KO)マウス、GM2/GD2合成酵素KOマウス、両者のDKOマウス)初代培養アストロサイトのガングリオシドproflieを明らかにするため、各ガングリオシド抗体を用いてFACSを行った結果、WTアストロサイトにはニューロンと同様に主にGM1, GD1a, GD1b, GT1bが高発現し、これらのガングリオシドは合成酵素を欠損させることにより消失した。欠損マウスではこれらのガングリオシドが欠失する事によりアストロサイトの性状に異常が引き起こされることが示唆された。 初代培養アストロサイトを用いて、GD3合成酵素KO、GM2/GD2合成酵素KO由来のアストロサイトの平常状態における増殖能を検討した結果、WTマウスと比べ大きな違いが見られなかった。また、WTとGD3合成酵素KO、GM2/GD2合成酵素KOアストロサイト、ミクログリアの炎症性・抑制性サイトカイン(TNFα, IL-1α, IL-1β,IL-6, IL-10)の発現レベルをreal time RT-PCRにて比較検討した結果、IL-6の発現レベルが、WTに比べGD3合成酵素KOアストロサイトで亢進していた。また、WT及びGM2/GD2合成酵素KOアストロサイトを炎症性サイトカイン(IL-6)で刺激した結果、WTに比べ、GM2/GD2合成酵素KOアストロサイトでは炎症性サイトカインの発現が顕著に亢進した。さらに、GM2/GD2合成酵素KOアストロサイトでは抗炎症因子SOCS3の発現低下が認められた。また、GM2/GD2合成酵素KOミクログリアではこのような変化は認められなかった。これはガングリオシドがアストロサイトにおける炎症性サイトカインへの反応を制御していることを示唆している。
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