本研究では糖尿病抑制因子GnT-IVaを標的とした新規糖尿病治療薬開発を究極的な研究目的に掲げ、1)Mgta4a発現調節機構の解析、2)β細胞における多面的なGnT-IVa機能の詳細解析、3)β細胞機能保持による末梢組織への作用の解析といった包括的検討を行い研究基盤の確立を目指した研究を行った。 個体レベルでの「Mgat4a Tgマウス末梢組織でのインスリン抵抗性の軽減」の生理学的機作を解明するため、高脂肪食負荷マウスにおける糖代謝解析を行った結果、Mgat4a遺伝子導入により膵臓β細胞におけるグルコースセンサー機能を維持する事で、末梢組織におけるインスリンシグナルを正常に維持できる事を発見した。また、アメリカ・カリフォルニア大学・サンタバーバラ校のJamey Marth博士および、サンディエゴ校のJerroid Olefsky博士、Mark Chen博士との共同研究から、ヒトの2型糖尿病においても同様のメカニズムが存在する事を明らかにした。これらの結果は、本研究が目指す「糖尿病抑制因子GnT-IVaを標的とした新規糖尿病治療薬開発」が現実的であり、実際のヒトの2型糖尿病の治療に直結する事を強く示唆していた。一方、Mgat4a遺伝子プロモーターを有するレポーター導入細胞を用いたMgat4a遺伝子発現調節様式の解析から、Mgat4a遺伝子の発現が細胞の栄養環境により調節されることが判明した。今後、その調節メカニズムの解析を推進するとともに、Mgat4a遺伝子の発現を直接誘導できいる化合物探索実験へと展開していきたい。 さらに、GLUT2の糖鎖異常が膵臓β細胞膜上でのマイクロドメイン局在に及ぼす影響について解析を行った結果、通常GLUT2は自身のN型糖鎖を介してガレクチン9と結合しnon lipid-raftに局在しているが、GnT-IVaの発現低下を起因とする糖鎖形成不全によりlipid-raftへと移行し、そこでStomatinと結合することで、糖輸送活性が阻害されることを明らかにした。
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