研究課題
ヒストンメチル化酵素SETDB1を標的とした抗肥満薬の開発を目指し、SETDB1の酵素活性を制御するメカニズムの解明を行い、以下の成果を得た。SETDB1の構造と機能の相関を明らかにするために、酵素活性に必要な領域の同定を行った。まず、N末端側にGSTタグを付加した全長、または、N末端側の領域を順次欠失させたSETDB1タンパク質を、昆虫由来Sf9細胞に発現させた。タンパク質を回収し、ヒストンメチル化酵素活性を測定した。その結果、SETドメインのみの欠失変異体には活性が認められなかったが、SETドメインに加えてさらにN末端側の領域を含む欠失変異体は活性を有しており、この領域がヒストンメチル化酵素活性に重要であることが明らかになった。他のヒストンメチル化酵素G9aはSETドメインのみでも活性を持つことが報告されており、今回得られた結果はSETDB1の構造と活性の相関を明らかにする上で非常に興味深い結果である。現在、活性を持つ欠失変異体を用いてSETDB1の構造解析を進めている。次に、SETDB1の機能をその相互作用因子から明らかにするために、複合体解析を行った。抗SETDB1抗体を用いて免疫沈降法を行った結果、SETDB1と特異的に結合する因子としてヘテロクロマチン形成に関わるMCAF1を同定した。MCAF1は、SETDB1のヒストンメチル化酵素活性をジメチル化からトリメチル化に変化させることが知られており、SETDB1の機能を明らかにする上で鍵となる相互作用因子と考えられる。現在、SETDB1とMCAF1の結合様式を詳細に解析している。以上、本研究で得られたSETDB1の構造と機能の関連をもとに研究を進めることで、SETDB1を標的とした薬剤の開発が期待できる。
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The Journal of Biochemistry
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