研究課題/領域番号 |
23790365
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神澤 範行 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (40452461)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム病 / GPIアンカー / アルキルアシル型リン脂質 |
研究概要 |
ペルオキシソームの形成障害や機能異常でペルオキシソーム病と総称される難病を発症するが、今回そのアルキルリン脂質生合成酵素を欠損するペルオキシソーム病患者の肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)2と3型患者細胞でアルキルアシル型GPIの生合成能が著しく低下していることと、その酵素をペルオキシソームへ輸送するのに必要なPEX7を欠損するCHOの変異細胞とRCDP1型患者由来細胞においてもアルキルアシル型GPIを欠損することを明らかにした。さらにペルオキシソーム病でも最も深刻なZellweger症候群の患者においても同様の結果を得た。ペルオキシソーム病でもRCDPはペルオキシソームの機能でも特にアルキルリン脂質生合成酵素の異常でプラスマローゲンを欠損して症状を引き起こすとされている。我々の結果からペルオキシソーム病患者はアルキルアシル型GPIも欠損していることを示しており、これらの患者ではGPIがジアシル型である事で、GPIアンカー型タンパク質が正常に機能ぜずアルキルアシル型GPIの欠損も諸症状の病因の一つになっている可能性が考えられる。これまでアルキルアシル型GPIの役割については明らかにされてないが、アルキルリン脂質生合成酵素を欠損するCHO細胞で内在性のGPIアンカー型タンパク質であるUrokinase plasminogen activator receptor(uPAR)の発現量を検討したところ、欠損細胞でuPARの発現量が上昇するが、責任遺伝子を導入するとその発現量が減少することが明らかとなった。生体内でのアルキルアシル型GPIアンカーの役割はまだ明らかになっていないが、ペルオキシソーム病患者では、GPIがジアシル型である事によりGPIアンカー型タンパク質の機能に影響が出て、その諸症状の少なくとも一部の原因になっている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにペルオキシソーム病とGPIの脂質部分の構造の関連を明らかにした。ペルオキシソーム病患者におけるGPIの脂質部分の構造や、アルキルアシル型GPIの生理学的意義は知られていなかったが、今回、ペルオキシソーム病患者ではジアシル型のGPIしか生合成しておらず、アルキルアシル型GPIを欠損する変異細胞においては、細胞表面の内在性のGPIアンカー型タンパク質の発現量の増加が見られるなど、今後のペルオキシソーム病の病態解明に向けた結果が得られつつある。今後、GPIの脂質部分の構造を変換する酵素の同定に取り組む。これまでの全体的な達成度はおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、GPI生合成のステップにおける、GPIの脂質部分の構造をジアシル型からアルキルアシル型に変換する酵素を同定する。GPIの脂質部分の構造変換に関わる酵素は、これまでに報告されておらず同定されると新規酵素となる。また、GPIがジアシル型からアルキルアシル型に変換される時に用いられるアルキル供与体も明らかになっていない。このアルキル供与体についても、研究期間内に解明を目指す。変換酵素が同定された後は、siRNAによってアルキルアシル型GPIを欠損する細胞の作成、同時にKOマウスの作成に取り掛かり、個体レベルでのアルキルアシル型GPIの生理学的意義の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進める。その内訳としては細胞培養に必要な培地と培養用容器に15万円、質量分析に関する費用で10万円、実験のアッセイ系を構築する費用として30万円、またGPIアンカーをアイソトープで標識して抽出するまでの一連の操作で使用する消耗品として40万円が必要である。加えて、本研究の研究計画を円滑に推進するには、研究に関連のある研究者との討論や学会に参加し、頻繁な研究の打ち合わせや情報の収集が不可欠である。そのための旅費として、それぞれの年度に国内旅費5万円と外国旅費30万円が必要である。
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