研究概要 |
これまでスフィンゴ脂質サルベージ経路からのセラミド生成が炎症性キナーゼ p38 の活性化およびインターロイキン6の生成を抑えることを明らかにした.さらに,p38 ファミリーの中で δ アイソフォームがセラミドの標的分子として同定した.そこで,申請者は p38δ および炎症調節へのサルベージ経路の寄与を分子レベルで明らかにする.これらを解明するために、以下の 2 つの Aims を実施した: Aim-1, サルベージ経路由来セラミドによる炎症性キナーゼ p38δ の不活化調節機構の解明:サルベージ経路からのセラミドシグナルの生成は,ceramide-activated protein phosphatases を活性化することで炎症性キナーゼ p38 (主に p38δ) の活性化を抑える。さらに,新たに p38δ の活性化に制御される標的炎症性分子群(非公開)を同定した. Aim-2, サルベージ経路による炎症性細胞応答の制御:p38δはマクロファージなどの炎症細胞において高発現している.炎症性細胞の組織への遊走は,炎症性病態形成において重要なステップである.まず,外因的に添加したセラミドは細胞移動運動能を著しく低下させることを見出した.外因的に加えられたセラミドの大部分は,一度分解されスフィンゴシンへと変換され,再びセラミドに再合成される。このセラミド再合成を阻害すると,セラミドの作用は有意に減弱した.このことから,サルベージ経路を介して再合成されたセラミドは細胞の移動運動/遊走を抑える分子である可能性が考えられる.今後,p38δの細胞移動運動/遊走への関与,さらにはサルベージ経路による調節を明らかにすることが課題である. 本研究成果はこれら炎症調節の破綻を伴う疾患への新規治療法の開発に繋がると期待される.
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