本年度は、核小体タンパク質NPM1のC末端領域に結合するタンパク質の同定を試みた。NPM1のC末端約100アミノ酸をコードする遺伝子をHeLa細胞に導入し、NPM1タンパク質をゲルろ過およびアフィニティーカラムにより精製し、質量分析をおこなった。その結果、60Sリボソームの構成因子であるリボソームタンパク質RPL22を同定した。NPM1/RPL22複合体は培養細胞においても認められ、細胞周期間期の核内でrRNAを介して形成されることが明らかとなった。また細胞分裂期では、活性化したCDK1によりNPM1がリン酸化されてrRNAとの結合能を失うため、結果的にNPM1/RPL22複合体が解離することが明らかとなった。分裂期におけるNPM1のRNA結合能制御には、オーロラによるリン酸化は関与しなかった。よって、初年度の研究成果と考え合わせると、分裂期におけるNPM1のS293のリン酸化はNPM1の核小体への局在とRNA結合能のいずれにも関与しないことが明らかとなった。 急性骨髄性白血病患者の約3割に認められる変異型NPM1(NPM1c)は、核小体移行シグナルが消失し、新たに核外移行シグナルを獲得しているため、細胞質に局在する。試験管内における再構成実験から、NPM1cはRNA結合能を完全に失っており、培養細胞を用いた実験においても間期でのNPM1/RPL22複合体を形成しなかった。この結果は、NPM1cがRPL22と複合体を形成できないのは、NPM1cが細胞質に局在することに加えて、本質的にRNA結合能を失っていることが原因と考えられた。
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