研究課題/領域番号 |
23790370
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高崎 伸也 九州大学, 大学病院, 助教 (90435149)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / 翻訳後修飾 / 構造解析 / TFAM |
研究概要 |
TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの解明のために、今年度は具体的にTFAMのX線結晶構造解析とTFAMの分子機構の解明を行った。 TFAM/mtDNA複合体の原子レベルの構造解明に向けて、TFAMのX線結晶構造解析のために、様々な種類のTFAMを大腸菌を用いて高純度で作製することができた。ヒトTFAMだけでなく酵母のTFAMホモログや、これらの一部領域のみの変異体や、結晶化を促進することが予想される点変異体や、結晶化を促進することが予想されるタンパク質との融合体などを作製した。これらに対して、より結合力の強いDNAの配列の決定を行い、DNAとの複合体を作製した。これらすべてにおいて、結晶化を行い、いくつかにおいて3~8オングストローム程度の結晶を得ることができた。様々な種類のサンプルを準備でき結晶を得ることができるようになったことは、結晶化の成功率を大きく上げたことを意味する。 TFAMの分子機構の解明では、まず、重要と予想されるアミノ酸を置換した変異体、および結晶化のために作製した変異体のDNA結合能、転写活性能の評価を行った。これらにより、TFAMのどのアミノ酸がDNA結合および転写活性に重要なのかそうでないのかを明らかにすることができた。また、in vitroでTFAMが酸化修飾されることを示し、またその修飾されるアミノ酸残基の部位およびその修飾の程度まで求めることができた。同時に酸化修飾されたTFAMのDNA結合能を評価した。これにより、酸化修飾によりどのアミノ酸が修飾されどのようにDNA結合能に影響を与えるかを明らかにすることができた。以上より、TFAMの分子機構の一部を明らかにすることができた。ここで得られた情報は、原子レベルでの構造と照らし合わせることでより重要な意味を持つようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの調節機構の解明を目指して、立体構造と機能の両方の面から総合的に解析を行っている。 まず、立体構造からの解明では、原子レベルの構造を明らかにするうえで必要となるTFAM/mtDNA複合体のX線結晶構造解析を行った。そのうち、最も困難と予想される結晶化のステップにおいて、様々な種類のサンプルを準備することに成功しており、多角的に攻めることを可能にした。さらに実際に良質な結晶も得られている。今後この調子でいけばいずれ構造解析をできるレベルの結晶を得ることができ、TFAMの原子レベルの構造を解明することができると考えられるので、順調であると考えられる。 次に、機能からの解明では、TFAMのDNA結合能に重要なアミノ酸残基、転写活性に重要なアミノ酸残基を明らかにすることができ、TFAMの分子機構のを解明することができた。今後、TFAMの構造の情報等と合わせることで、より詳細なTFAMの分子機構の解明につなげることを期待できる。また、in vitroで、酸化修飾によるTFAMの分子機構を明らかすることができた。今後in vivoでのTFAMの酸化による機構を明らかにすることで、総合的にTFAMの酸化による影響を明らかにすることができる。酸化の手法と同様に行うことで、アセチル化による分子機構も明らかにできると考えられる。TFAM自身の分子機構の解明が進んだため、今後TFAM機能調節タンパク質の解析につなげることができる。以上より順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの解明に向けて、立体構造と機能の両方の面から、研究を進めていく。 立体構造の面からは、引き続き、TFAM/mtDNA複合体のX線結晶構造解析を行っていき、原子レベルの構造を明らかにする。今年度に作製した様々な種類のサンプルを用いてより良質を結晶を得ることを目指す。そして、原子レベルの構造を明らかにする。そして、構造情報より、必要と思われる変異体を作製し機能を評価することで、より詳細なTFAMの分子機構を明らかにする。また、状況に応じて、今年度作製した酵母のTFAMホモログについても立体構造を明らかにし、TFAMの構造についての理解を深める。 機能の面からは、まず、in vitroでの酸化修飾によるTMFAの機能調節を明らかにできたので、細胞内での機能調節機構を明らかにする。酸化と同様にアセチル化についても、in vitro、in vivoでの機能調節機構を明らかにする。また、これらの修飾の際に働くと思われるアセチルトランスフェラーゼやTFAMの分解酵素であるかもしれないLon proteaseなどの同定および機能解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も様々な実験で今年度と同様に消耗品を中心に使用する。結晶化の材料として、タンパク質精製費用や、合成DNAなどを使用する。また結晶化のために、結晶化剤などの試薬も引き続き使用する。また、次年度はX線回折測定の回数が増えることが予想されるので、このための消耗品や旅費などが今年度より多く必要となる。また、構造の解析が終われば、新たな変異体の機能解析を行うために、In vitro転写活性費用、ビアコア費用や質量解析費用も使用する。また、TFAM機能調節タンパク質の探索のための、細胞培養費用やそこからタンパク質を精製してくるための抗体などの作製費用なども必要となる。また、結果がまとまれば学会発表を行うためそのための費用も必要となる。
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