研究課題
TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの解明のために、今年度は具体的にTFAM/mtDNA複合体のX線結晶構造解析とTFAMの修飾機構の解明を行った。TFAM/mtDNA複合体の原子レベルの構造解明に向けて、TFAMのX線結晶構造解析を引き続き行った。前年度作製した、ヒトTFAMの一部領域のみの変異体、酵母のTFAMホモログであるAbf2p、結晶化を促進することが予想される40種類の点変異体、結晶化を促進すると予想されるタンパク質との融合体など、様々な種類のTFAMについて、DNAとの複合体を作製し、よりよい結晶化条件を引き続き探索した。それぞれ改善した面もあるが、まだ構造解析できるレベルの結晶は得られていない。また、TFAMの修飾機構の解明に関しては、アセチル化について、修飾の機構と、修飾後の機能の変化を調べた。まず、TFAMがどのようにアセチル化されるのか、アセチルトランスフェラーゼの存在の有無やアセチル化機構の解明を行った。また、TFAMが細胞内でアセチル化されるのか、またされるならどの部位なのかについて、阻害剤により脱アセチル化酵素の活性を抑制した状態の細胞から、TFAMを免疫沈降で回収して、質量解析装置による解析を行った。また、アセチル化されたTFAMの作製に成功し、それを用いてアセチル化TFAMのDNA結合能を調べた。これにより、TFAMのアセチル化により、DNA結合能が下がることを明らかにした。さらに、DNAからはずれたTFAMがLon proteaseによって、分解されるのかどうかを調べるために、大腸菌によるLon proteaseの発現系の構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
本年度も、引き続きTFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの調節機構の解明を目指して、立体構造と機能の両方の面から総合的に解析を行っている。まず、立体構造からの解明では、原子レベルの構造を明らかにするうえで必要となるTFAM/mtDNA複合体のX線結晶構造解析を行った。前年度までに様々な種類のサンプルを準備することに成功しており、最も困難と予想される結晶化のステップにおいて、多角的に攻めることを可能にしている。本年度はこれらを用いて、良質な結晶を得る条件をしぼりこんでいる。今後、構造解析をできるレベルの結晶を得て、TFAMの原子レベルの構造を解明することができる可能性は高いと予想しており、順調であると考えられる。次に、機能からの解明では、前年度までに、TFAMのDNA結合能に重要なアミノ酸残基、転写活性に重要なアミノ酸残基を明らかにすることができた。また、in vitroでの酸化修飾によるTFAMの分子機構を明らかすることができた。本年度では、アセチル化について、アセチルトランスフェラーゼの有無や、アセチル化によりTFAMがDNAとの結合能を下げるなど、アセチル化による機能調節機構の解明をすすめることができた。またDNA結合能が弱まったTAFMがそのあとどうなるか解析するためのLon proteaseの準備も進めている。よって、今後引き続き解析を行うことで、TFAM機能調節タンパク質を含めた、より広範なヌクレオイド機能調節機構の解明ができると期待できる。
今後も、TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの解明に向けて、立体構造と機能の両方の面から、研究を進めていく。立体構造の面からは、引き続き、TFAM/mtDNA複合体のX線結晶構造解析を行っていき、原子レベルの構造を明らかにする。今年度までに作製した様々な種類のサンプルを用いて、引き続きより良質を結晶を得ることを目指し、原子レベルの構造を明らかにする。機能の面からは、特にアセチル化に注目して研究を進めていく。今後、アセチルトランスフェラーゼの有無などを明らかにしていき、TFAMのアセチル化によるヌクレオイドの機能調節機構の解明を目指す。ここで、ミトコンドリア内で非常に重要であることが認識されてきているアセチル化による調節機構について、TFAMによるアセチル化の調節機構を例として、TFAMだけでなくより一般的なミトコンドリア内のアセチル化による調節機構の解明を目指す。また、アセチル化だけでなく酸化による調節機構の解明も続けていく。
次年度も、前年度、今年度と同様に消耗品を中心に使用する。結晶構造解析のための、タンパク質精製費用や、合成DNA、結晶化剤やX線解析測定用の器具なども引き続き使用する。また、X線回折測定のための旅費なども必要となる。効率の面などから、必要となればインキュベーターの購入も検討する。また、機能解析を行うために、in vitro転写活性費用、ビアコア費用や質量解析費用も必要となる。また、in vivoでの、解析のために細胞培養費用や酸化修飾検出のための試薬、また抗アセチル化リジン抗体の費用なども必要となってくる。また、学会発表を行うための費用も必要となる。
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