研究課題/領域番号 |
23790370
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高崎 伸也 九州大学, 大学病院, 助教 (90435149)
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キーワード | ヌクレオイド / 翻訳後修飾 / TFAM |
研究概要 |
TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの機能の調節機構の解明のために、今年度はTFAMの修飾機構の解明を中心に行った。 昨年度からのTFAMのアセチル化機構の解明から、その修飾機構は核や細胞質では見られない独特で興味深いものであった。さらにこれは、TFAMのみならず多くのミトコンドリア内のタンパク質に一般化できる可能性が示唆された。そのために、グルタミン酸脱水素やリンゴ酸脱水素酵素など他の40種類程度の酵素について同様の修飾機構が使われているのかどうかを調べた。またこの修飾機構は、サクシニル化およびマロニル化にも適応されているのではないかと考え、それらについても調べた。抗アセチル化リジン抗体、抗サクシニル化リジン抗体、抗マロニル化リジン抗体を用いたウエスタンブロッティングおよび質量解析法により、これらの修飾を確認した。また、修飾率および修飾部位も求めることができた。また修飾機構の詳細な条件なども確認した。また、Sirt3, Sirt5を用いて、これらの修飾体の脱修飾も確認した。生体内で行われている活性調節がここで確認した修飾および脱修飾と相関がある事も確認した。またヌクレオイドにおけるTFAMの翻訳後修飾による活性調節機構について明らかにした。 さらにミトコンドリアで独特な修飾機構がとられている原因について、AcCoA、SucCoA, Malonyl-CoAなどのミトコンドリア内の代謝が関連しているのではないかと考え調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヌクレオイドの中で、アセチル化によるTFAMのDNA結合能の変化や転写活性の変化などを明らかにすることができ、この部分の目的を達成することができた。 さらに、その修飾機構が非常に興味深いものであったために、予定していたTFAMのアセチル化機構によるヌクレオイドの機能の調節機構の解明から大きく発展して、TFAMのみならず、ミトコンドリア内の多くのタンパク質に広く適用される特徴的な修飾機構の解明につながった。さらに、予定していたアセチル化の機構の解明だけでなく、サクシニル化、マロニル化の機構の解明まで発展させることができた。そのため、当初の予定を超えて順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回確認することができたミトコンドリアのアセチル化、サクシニル化、マロニル化の修飾機構は、非常に興味深いものであるため、これらの研究の遂行に重点をおいて進めていく。基本的には、今まで得られた結果の再現性の確認やN数を増やしていく。具体的には、アセチル化について、各タンパク質の各部位の修飾率の測定や、修飾によるそれぞれの酵素の活性の変化などを測定し再確認する。また、サクシニル化やマロニル化などによる修飾や活性調節も足りない部分を測定し追加していく。 これらが終了次第、結果をまとめて、論文および学会等でする。
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次年度の研究費の使用計画 |
TFAMを中心としたミトコンドリアヌクレオイドの構造と機能からの総合的な解明のうち、今年度は立体構造からの解明よりも、機能からの解明を中心に研究を進めた。そのため、立体構造からの解明に必要な結晶化用DNAや、凍結チューブ、X線回折測定用費用、AFM費用などの消費をある程度抑えることができた。そのために、次年度使用額が生じた。 次年度は、ミトコンドリアの翻訳後修飾の機構の解明に必要な消耗品を中心に使用する。質量解析費や、活性測定費などを使用する。また、TFAMの機能解析を行うために、in vitro転写活性費用も必要となる。また、in vivoでの、解析のために細胞培養費用なども必要となってくる。さらに修飾機構の研究の発展に伴い、当初予定していなかったサクシニル化やマロニル化の研究遂行のための抗体等も必要となる。また、学会発表を行うための費用も必要となる。
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