研究課題/領域番号 |
23790371
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣田 有子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50588259)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / ミトコンドリア |
研究概要 |
オートファジーは細胞内における主要な分解メカニズムのひとつであり、生体の恒常性維持に大きく寄与している。これまで酵母による研究から30以上のオートファジー(ATG)遺伝子が同定され、ヒトを含む高等真核生物でもこのATG遺伝子が保存されていることから、真核生物間でほぼ共通の分子機構を持つと考えられてきた。しかしながら、近年、酵母におけるオートファジーに必須とされるAtg5やAtg7非依存的に誘導されるオートファジー経路の存在が報告されている。本研究は、申請者らが新規に開発中のきわめて簡便なオートファジー観察システムを用い、未知のオートファジー遺伝子や経路を発見し、その機能解析を行おうとするものである。本年度において、新規のオートファジー関連因子の同定を目的として、pH依存的に異なる励起波長をもつKeima蛍光タンパク質を用いた新規の手法で行い、以下の結果が得られた。(1)Keimaを用いた実験がオートファジーを観察する系として正しいことを、オートファジー誘導薬物rapamycinやオートファジー阻害剤3-methyladenineなどを用いて検証し、新たなオートファジー検出法として有用であることを確認した。(2)細胞質にKeimaを発現させた細胞およびミトコンドリア移行シグナルを付加したKeimaを発現させた細胞を用いて、バルクなオートファジーあるいはミトコンドリアを特異的に分解するミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)を検出する系を確立した。(3)Atg5およびAtg7に非依存的なマイトファジーの因子としてMAPKのErk2およびp38が関与することを明らかにした。これらの結果は、既存のオートファジーとは異なるMAPKシグナル経路によってマイトファジーが制御されていることを示唆しており、新たなオートファジーの分子メカニズムを解析するにあたって、非常に重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、初年度においてKeima蛍光タンパク質を用いたオートファジー観察実験系の確立とAtg5およびAtg7非依存的なオートファジー関連因子の同定を目的としていた。ショウジョウバエS2細胞を用いたスクリーニングの後、次年度以降にヒト細胞を用いた系へステップアップする予定であったが、すでに初年度において数種のヒト細胞を用いたKeima蛍光タンパク質によるオートファジー観察系を確立した。さらに、Atg5/Atg7に非依存的なオートファジー関連遺伝子としてMAPKのErk2およびp38を同定し、この実験結果もヒト細胞で効率よく再現性が得られている。申請時の計画では次年度において、同定した遺伝子がオルガネラ特異的オートファジーに関与するか否かを検討する予定であったが、Erk2およびp38は非選択的なオートファジーではなく、ミトコンドリア選択的分解であるマイトファジーに特異的に関与することを明らかにした。すなわち、本研究の目的であるAtg5およびAtg7非依存的なオートファジー関連因子としてErk2およびp38を同定できたことで当初の計画の予定通りに進行することが出来ていると考えている。さらにErk2およびp38がマイトファジー特異的因子であることを示唆する結果が得られ、次年度に行う予定であったオルガネラ特異的オートファジーに関与するか否かの問題にも言及し当初の計画以上に研究を進行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ヒト培養細胞を用いた検討を主とし、新たに同定されたMAPKsとBeclinやPtdIns 3-kinase (PI3K) 経路あるいはmTOR経路といった既存のオートファジー経路への関与を検討する。またErk2およびp38の発現抑制時あるいは過剰発現時にオートファジー分解あるいはオートファゴソーム形成の増減について、蛍光顕微鏡(詳細な局在検討を目的とする場合は共焦点レーザー顕微鏡を用いる)での観察、またLC3量を指標としたウエスタンブロッティングなどで検討を行う。ミトコンドリア分解をより詳細に確認するためにも透過型電子顕微鏡による観察も視野にいれて検討する必要があると考えている。さらに時間的に可能であれば、Erk2およびp38とミトコンドリアを繋ぐ下流因子の同定も試みたいと思っている。酵母ではミトコンドリア外膜上に局在するAtg32がマイトファジー関連因子として機能していることが明らかにされているが、哺乳類細胞においてマイトファジーの直接的な因子は未だに同定されておらず、MAPKのシグナル経路の下流に位置すると考えられる当該因子を同定することは、傷害を受けたミトコンドリアの選択的分解メカニズムの解明において非常に重要な意味をもつと考えられる。そこで、Erk2およびp38のGST融合タンパク質を用いたpull-down assay等のin vitro実験あるいは免疫沈降法によるin vivo実験を行う。そこで同定された因子とマイトファジーとの関連について分子メカニズムを含めた詳細な解析を行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においてはショウジョウバエS2細胞のKeima発現細胞を用いたRNAiライブラリーでのスクリーニングを予定していた。しかしながら、計画当初は購入可能であったライブラリーが発売中止になり、網羅的なスクリーニングが不可能になった。そのため、スクリーニングを目的として、大量のショウジョウバエ細胞培養に使う予定にしていた試薬費等は次年度のヒト細胞の培養に使用したいと考えている。本研究はヒト培養細胞を用いて行われるため、細胞培養用ディッシュ、フラスコや抗生物質、血清等の細胞培養用試薬や種々の変異体の高効率な導入にトランスフェクション試薬が相当量必要になると考えられる。とくに、Keima蛍光タンパク質は生細胞のまま観察できるという利点もあるが同時にガラスボトムプレートを用いて観察しなければならず、通常培養に用いるディッシュと比べて高価であるため、その費用に本年度使用予定であった費用を用いる予定である。さらに、ミトコンドリアがオートファゴーム内に隔離された像を観察するため、透過型電子顕微鏡を用いて行う予定にしているが、その試料作製に要する機器や試薬等に研究経費を要する予定である。また得られた研究成果は速やかに学会発表(国内・国外)を行う必要性があることに加え、学術雑誌への投稿及び論文掲載に際しては蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などで得られたカラーデータが比較的多くなるため一論文約20万円程度必要であると考えられる。
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