研究課題/領域番号 |
23790374
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
遠藤 宏樹 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (70468164)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大腸発がん |
研究概要 |
我々はこれまでの食餌性に高レプチン血症をきたすマウス(高脂肪食摂取ワイルドタイプマウス)を用いた大腸発がん実験で、これらのマウスが高レプチン血症をきたさないマウス(普通食摂取ワイルタイプマウス)と比べ短期間に有意に多数かつ大きな腫瘍を形成し、しかも腺腫のみならず腺癌が形成されることを確認している点、さらにレプチンが欠損したマウス(ob/obマウス)を用いた発がん実験では、マウスは高度な肥満状態を呈するにも関わらず大腸腫瘍はほとんど形成されず、また形成される腫瘍も非常に微小であることを発見した点、またレプチン受容体欠損マウス(db/dbマウス)でも同様に腫瘍形成の顕著な抑制を認め、上記現象がレプチン受容体を介するものであることを確認した点をまとめ、消化器分野の一流ジャーナルであるGut誌に報告した(Gut 2011;60:1363-71)。さらに昨年度は、他の肥満モデルマウスであるKKAy/KKマウスを使用した大腸発がん実験を施行し、高レプチン状態であるKKAyマウスで著名に発がんが促進されることを確認し、さらにレプチンの重要性を証明することができた。またレプチン受容体の腸管コンディショナルノックアウトマウスを用いて発がん実験を施行した。信憑性を高めるため何度か同様の実験を繰り返し、コンディショナルノックアウトマウスで腫瘍の増大が抑制されていることを確認しており、これはレプチンの全身への作用を除外した腸管への直接作用を確認した点で非常に重要性の高い結果であるといえる。さらにSTAT-3についてもコンディショナルノックアウトマウスを用いて発がん実験をしており、現在結果を解析中である。培養細胞を用いたレプチン受容体の発現の機序解明については、ドミナントネガティブにTCF4の転写活性を抑制した状態の発現を検証しているが、実験方法で難渋しており、試行錯誤中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸発がんにおけるレプチンの重要性について、肥満モデルでないレプチン受容体のコンディショナルノックアウトマウスで証明できた点は非常に意義が大きく、当初2年をかけて研究予定であったものが解析まで到達できており、十分研究がすすんでいることになると考える。これまで肥満と大腸癌の関係を調べる際、目的とするもの(今回はレプチン)以外の肥満ファクターが関与してしまい、腸管(発がん)への直接の関与を調べることは困難であったが、今回コンディショナルノックアウトマウスを用いることで、レプチンが明らかに大腸発がんへ重要な役割を果たしていることが実証された。またこれまでレプチン関連の発がん促進の分子経路としてSTAT3の重要性をつかんでいるが、これについてもSTAT3コンディショナルノックアウトマウスを用いて実験がすすんでいる。レプチン受容体発現の機序解明については、当初期待していた結果が得られず、実験方法の問題などを考慮し邁進しているが、十分すすんでいるとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は引き続きコンディショナルノックアウトマウスを用いた発がん実験の検証を継続し、さらにこの腫瘍部の組織やタンパクを用いた分子機序解析にまで研究をすすめる予定である。さらにコンディショナルノックアウトマウスで高脂肪食/普通食に食餌を分けた発がん実験を行い比較検討する。これにより肥満モデルにおけるレプチン/STAT3経路の重要性をさらに確認できる。また人為的なレプチンシグナルのon-offによる腫瘍形成への影響とその分子機序の解明について計画している。以下の計画により大腸発がんにおけるレプチンシグナルの役割を検証する。(1)ob/obマウスにおける発がん実験の途中ポリープができる時期に外因性レプチンの投与で腫瘍が増大するか?(2)ob/obマウスにおける発がん実験の途中ポリープができる時期に外因性レプチンの投与で形成されている微小ポリープにおいてSTAT3の活性化が起きるか?さらに昨年度難渋したレプチン受容体発現の機序についても引き続き研究を進める予定である。以上より得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は予定通り物品費に1,300,000円、旅費に300,000円、計1,600,000円使用予定である(直接経費)。
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