研究課題
本年度は以下の検討を行った。1. CD44-/-及び野生型マウス骨髄細胞を用いた白血病誘導遺伝子の導入及び移植私達は最近、がん遺伝子Mycを骨髄単核球細胞でレトロウイルスを介して発現させ移植するとおよそ2か月で前駆Bリンパ芽急性白血病・リンパ腫(pre-B ALL/LBL)を発症するモデルを構築し、B細胞マーカー陽性細胞集団に白血病幹細胞が存在することを明らかにしている。このモデルを用いてCD44のpre-B ALL/LBLの発癌及び白血病幹細胞における役割を明らかにするため、CD44-/-マウス及び野生型マウス骨髄より採取した単核球細胞にMycを発現させ移植した。その結果、CD44-/-由来の骨髄細胞を移植したマウスにおいて野生型に比べてpre-B ALL/LBLの発症率、頻度ともに有意な減少がみられた。このことからCD44がMycが誘導するpre-B ALL/LBLの発癌機構に関与することが示唆された。また、野生型由来腫瘍細胞及びCD44-/-由来腫瘍細胞の初代培養法を確立することができた。2. CD44発現抑制時のヒトB-ALL細胞株の増殖能の検討ヒトB-ALL細胞株においてCD44の代謝や増殖における役割を検討するため、CD44に対するshRNA及びLuciferaseに対するshRNA(control)をレンチウイルスベクターにて導入を行った。その結果、いくつかの細胞株においてshCD44導入細胞の増殖が抑制される傾向が見られた。また、低酸素濃度下で培養したところ、培養3~6日からshCD44導入細胞において有意に増殖が抑制されることがわかった。更に活性酸素として過酸化水素を処理したところ、いくつかのshCD44導入細胞株で有意に細胞死が増加することがわかった。これらの結果からCD44はB-ALLにおける代謝及び増殖・生存に重要な働きをしていることが示唆された。
3: やや遅れている
pre-B ALL/LBLマウスモデル及びヒト細胞株においてはおおむね順調に解析が進んでいるが、他の造血器腫瘍モデルであるAMLやCMLモデルにおいてウイルスベクターの構築や遺伝子導入条件の検討に時間がかかり、若干遅れが生じているため。
pre-B ALL/LBLモデルと同様にAML、CMLマウスモデルを早急に構築し、このモデルを用いて白血病幹細胞における役割を明らかにするため、CD44-/-マウス骨髄細胞を用いた検討を行う。また、CD44-/-と野生型の白血病幹細胞における代謝や増殖における変化を解析する。代謝経路にかかわる分子背景を明らかにするため、マイクロアレイ解析やPCRアレイ、メタボローム解析を行う。
主にマウスモデルを用いた解析を行うため、動物・飼料代、実験用試薬などの消耗品を主として研究費を使用する。また、日本癌学会学術集会や日本血液学会学術集会などの国内学会や米国癌研究会議(AACR)、米国血液学会総会(ASH)などにおいて研究成果を発表する旅費として使用する計画である。
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