研究課題
B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)におけるCD44の役割を明らかにするため、CD44ノックアウト(KO)及び野生型マウスから骨髄未熟細胞を採取し、N-Myc遺伝子を発現させた後、移植を行った。その結果、野生型及びCD44 KO由来どちらの骨髄細胞からもB-ALLが発症し、発症率・生存期間ともに有意な差は生じなかった。次に野生型及びCD44 KO由来のB-ALLを2次移植したところ、CD44 KO由来の腫瘍において有意に生存期間が延長することを見出した。この結果からB-ALL白血病幹細胞の維持にCD44が重要な役割を果たしていることが示唆された。ヒトのB-ALL細胞株を用いてshRNAによるCD44の発現抑制を行ったところ、活性酸素への感受性が高まることと、低酸素時に細胞増殖が抑制されることが分かった。このことから白血病幹細胞においてCD44が酸化ストレス時や低酸素時の生存における代謝機構を制御していることが示唆された。次に慢性骨髄性白血病(CML)におけるCD44の役割を明らかにするため、野生型及びCD44 KOマウス由来の造血幹細胞にBCR-ABL遺伝子を導入し移植を行った。その結果、野生型由来では全てのマウスがCMLを発症した一方、CD44 KO由来ではほとんど発症しないとことが分かった。CD44はCMLの骨髄ニッチへのホーミングに関与することが報告されているが、ホーミング時の血中酸化ストレスを回避する機構もCD44が担っている可能性も考えられた。これら白血病幹細胞における代謝制御の分子機構を明らかにするため、B-ALLにおける白血病幹細胞様分画にて特異的に発現している分子をマイクロアレイ法にて調べたところ、PKM2など糖代謝に関わる遺伝子が高発現していることが分かった。つまり糖代謝を促進することで酸化ストレス量を低下させていることが示唆された。
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