研究課題/領域番号 |
23790379
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
堀越 洋輔 鳥取大学, 医学部, 助教 (60448678)
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キーワード | 細胞極性 / 酸化ストレス / aPKC-PAR |
研究概要 |
炎症反応などによる酸化ストレスは、細胞・組織の傷害や癌の浸潤・転移に関与する可能性が示唆されている。しかし、酸化ストレスの細胞極性に対する作用についての詳細は不明であった。脂質は酸化ストレスに対する感受性が強く過酸化を受ける事から、脂溶性情報伝達物質であるイノシトールリン脂質(PIPs)の過酸化は、その作用(機能)が変化すると考えられる。申請者は、酸化ストレス刺激により、上皮細胞のPIPsの局在変化とその代謝に関わるPI3キナーゼシグナルの活性変化が誘導される可能性を見出した。また、aPKC-PAR複合体の形成阻害と局在変化を見出し酸化ストレスにより細胞極性の異常が誘導される事を発見した。これらの事から、「酸化ストレス→イノシトールリン脂質の過酸化→aPKC-PAR複合体の機能異常→細胞極性の異常」というカスケードが存在する可能性が浮上してきた。 平成24年度では、酸化ストレス傷害モデルラットおよび、培養上皮細胞への酸化ストレス傷害によって誘導された極性変化は、抗酸化作用を有する化合物の投与により抑制され、aPKC-PAR複合体の形成阻害も抑えられた。さらに、ヒト毛細胆管構造の異常が観察される胆汁鬱滞モデルマウスにおいても極性異常が確認された。平成25年度は、胆汁鬱滞モデルマウスにおいて観察された極性異常の過程でaPKC-PAR複合体の形成やaPKCの過剰な活性化が生じているか検討する。また、aPKCの活性化阻害や発現抑制により酸化ストレスによって惹起される極性変化が抑えられるか検討する。 本研究にから、酸化ストレスによる細胞極性制御の異常によりヒト病態の発生に関わる事が明らかとなれば、細胞極性の変化が観察される病態発生の分子基盤が明かとなり独創的な研究となる事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は「酸化ストレスにより誘導される脂溶性情報伝達物質の過酸化物が、極性制御因子Par3, aPKC-PAR6からなる三者複合体(aPKC-PAR複合体)の機能を変化させ炎症性病態を誘導するか明らかとする」ことである。 本研究課題、平成23年度本は、四塩化炭素による酸化ストレス肝傷害モデルラットで確認された極性異常が、培養上皮細胞への酸化剤添加や酸化ストレスによるマウス胆汁鬱滞モデルにおいて極性異常が生じている検討した。また、それら酸化ストレスモデルに抗酸化剤の処理による極性異常の抑制効果を生化学的手法および免疫組織化学を用いて精査した。その結果、培養細胞への酸化ストレス処理によりPar-3の細胞間接着の局在が失われ極性異常が生じている事が明かとなった。この時、aPKC-PAR複合体形成の阻害が確認された。さらに、これまで検討していなかった電子顕微鏡を使った解析結果によって、炎症を伴う原発性胆汁性肝硬変で確認されている形態異常が、本研究解析モデルラットにおいても同様の変化が生じていた。平成24年度では、胆汁鬱滞モデルマウスの胆管上皮細胞においてaPKC、Par-3の細胞間接着部位の局在が失われ極性異常が誘導される事を突き止めた。これら変化は、抗酸化作用をもつ化合物の投与により抑制された。この結果から、ヒト病態発生に酸化ストレスによるaPKC-PAR複合体の機能変化が関与する可能性が強く示唆された。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、原発性胆汁性肝硬変のモデルであり酸化ストレスによって誘導される胆汁鬱滞モデルマウス肝臓を用いて①aPKC-PAR複合体の形成、およびaPKC活性の変化を生化学的手法により検討する。②aPKC特異的阻害薬を用いてその活性を抑制し酸化ストレスにより惹起される細胞極性の異常が抑えられるか検討する。③平成24年度に引き続き、ヒト病態における酸化ストレスによる細胞極性制御異常の関わりについて検討するため、酸化ストレスが関与する炎症性腸疾患モデル動物を用いた解析を行う。その準備実験として、腸管由来の培養細胞に酸化ストレス刺激を処理し細胞極性への作用と、生化学的手法を用いてaPKC-PAR複合体形成およびaPKCキナーゼ活性に与える作用について検討する。これら解析を通じ、細胞極性の変化が観察される病態発生の分子基盤が明かとなれば独創的な研究となると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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