研究課題
炎症反応などによる酸化ストレスは、細胞・組織の傷害や癌の浸潤・転移に関与する可能性が示唆されている。しかし、酸化ストレスの細胞極性に対する作用についての詳細は不明であった。脂質は酸化ストレスに対する感受性が強く過酸化を受ける事から、脂溶性情報伝達物質であるイノシトールリン脂質(PIPs)の過酸化は、その作用(機能)が変化すると考えられる。申請者は、酸化ストレス刺激により、上皮細胞のPIPsの局在変化とその代謝に関わるPI3キナーゼシグナルの活性変化が誘導される可能性を見出した。また、aPKC-PAR複合体の形成阻害と局在変化を見出し酸化ストレスにより細胞極性の異常が誘導される事を発見した。これらの事から、「酸化ストレス→イノシトールリン脂質の過酸化→aPKC-PAR複合体の機能異常→細胞極性の異常」というカスケードが存在する可能性が浮上してきた。平成25年度では、新たに酸化ストレス傷害モデル動物としてマウスを作成し解析を行った。ANIT (alpha-naphthylisothiocyanate)による胆汁うっ滞モデルマウスを使った解析から、胆汁うっ滞による肝細胞障害の初期過程で管内胆管のタイトジャンクション(TJ)の消失やE-cadherinで観察される細胞間接着構造の異常が確認された。この時、aPKCやPar-3のTJの局在が失われていることが明らかとなった。本研究により、酸化ストレスによる細胞極性制御の異常によりヒト病態の発生に関わる可能性が示唆された。今後、更に、極性制御分子の機能変化について詳細に検討を行い検討により、細胞極性の変化が観察される種々の病態の分子基盤が明かとなり独創的な研究となる事が期待される。
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