研究課題/領域番号 |
23790381
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
金崎 啓造 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60589919)
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キーワード | COMT / 妊娠高血圧腎症 / 糖尿病 / 妊娠糖尿病 / 脂肪肝 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
昨年度までにCOMT不全が高脂肪食のもとで耐糖能の悪化と関連する事、それがCOMTの代謝産物である2-methoxyestradiolの投与により改善することを見出しており、本年度はその詳細な分子機構を解明する事に努めた。 COMT不全が妊娠高血圧腎症の病態に関連する事、妊娠高血圧腎症がインスリン抵抗性を惹起する事などより、申請者は高脂肪食のもとCOMT不全により惹起される耐糖能異常はインスリン抵抗性悪化にあると先入観を持っており、脂肪組織、肝臓へのマクロファージの浸潤などそれを指示する所見も得られている。しかしながら、短期間(2週間)の高脂肪食投与のもとで2-methoxyestradiol投与により改善する耐糖能は、血中インスリン濃度の上昇を伴っていることを見出した。昨年度既に抗糖尿病薬メトフォルミン投与により肝臓COMT蛋白の発現増加が認められる事を見出していたが、2週間の高脂肪食投与のもとメトフォルミン投与を行うと、血糖の低下とともにインスリンの分泌が亢進する事、そのメトフォルミンによるインスリン分泌増加はCOMT阻害薬投与により抑制される事も見出した。 更に、インスリン産生beta-細胞ラインであるmin-6細胞を用いて検討したところ、2-methoxyestradiol投与により分泌インスリンは増加した。メトフォルミンは100mMと高濃度を用いてもインスリン分泌を増加させなかった。現在2-methoxyestradiolによるインスリン分泌の更なる詳細な分子機構を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
はじめに目的としたマウスの種によるホモシステイン投与に対する反応の違いに関しては、現時点で仮説を証明する予備的結果は得られていない。2-methoxyestradiol感受性が高いと仮説したDBAマウスにおいて、予想に反して2-methoxyestradiol投与により血糖改善効果も得られなかった。 しかしながら、メトフォルミンのダーゲットがCOMTである可能性を突き止め、COMT代謝産物である2-methoxyestradiolがインスリン分泌刺激能を有する事を見出したことは、予想外の進展と言える。この発見は、新たなインスリン分泌制御機構と考えられ、COMT不全による2-methoxyestadiol産生不全がメタボリックシンドロームや2型糖尿病において病初期においてみとめられるインスリン分泌能低下に関与する可能性が示唆される。今後詳細な分子機構を突き止め、創薬への道も切り開いて行く事が可能になると確信する。
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今後の研究の推進方策 |
COMT不全が妊娠高血圧腎症とメタボリックシンドロームに共通する分子機構であるという仮説はほぼ正しい可能性がある。本年度は主に次の2点を重点的に取り組み、早期の論文発表につなげたい。 1) 2-methoxyestradiolによるインスリン分泌調節機構の解明:現時点では2-methoxyestradiolによりbeta-細胞においてAMPKの活性化が(以前既に見出している肝臓同様)生じる事を解明しているが、さらにmin-6細胞に置けるAMPKやその他インスリン分泌刺激作用のある転写因子などのノックアウトを行い、2-methoxyestradiolのインスリン分泌能を検討する。 2) 妊娠マウスのphenotype: 現時点でCOMT阻害薬投与により耐糖能が悪化する事は確認済みであり、2-methoxyestradiol投与により耐糖能が改善するかどうかを様々な2-methoxyestradiol量を用いて確認する。 3) その他:2-methoxyestradiolはpparの活性化薬rosiglidasoneと非常に構造がにており、ppar活性化能を検討し、脂肪細胞へ対する効果や脂肪肝改善効果との整合性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記1)-3)の目的を達成を優先する。 1)に関しては、培養細胞を用いた検討で、各種抗体やELISA、遺伝子ノックダウンの試薬を購入する。 2)に関しては、妊娠マウスのフェノタイプ解析を行い、耐糖能の評価、インスリン濃度の測定(ELISA)等をおこなう。その為に、動物購入ー飼育、インスリン濃度の測定ELISA購入などが必須である。 3)PPAR活性化を解析するレポーターアッセイし焼く、各種抗体購入。
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