研究課題/領域番号 |
23790386
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
横山 俊史 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10380156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 性分化 |
研究概要 |
性逆転症系統遺伝子組換え動物を用いて,真性半陰陽個体における性分化関連因子の発現解析を行った.その結果,タンパク質レベルで胎子期における雄性化の実行因子であるSox9の発現量の差が認められた.その発現は雄性生殖腺の形成程度と比例しており,雌性生殖腺を有する個体では殆ど認められなかった.この結果は,雄性生殖腺型性へのSox9発現の関与からすると妥当な結果であるが,同一遺伝子型を有する個体よりこれらの差が生じた事から,本研究が目的としているエピジェネティック修飾による性分化制御が行われていることが強く示唆され,本研究の重要性が再認識された.しかしながら,同個体群より摘出した生殖腺を用いた遺伝子発現量の解析においては,Sox9発現に有意な差は認めることが出来なかった.この結果は微小な胎子性腺を材料として用いたことにより有意差が隠されたためであり,遺伝子発現量においてもSox9に差が生じていると申請者は考えている.すなわち,同一遺伝子型内の雄性生殖腺の形成程度とSox9の調節機構を精査することにより,性分化の過程に対するエピジェネティック修飾の影響を明らかにすることが可能である.発現解析が難しい点についてはすでに検討済みで,次項の達成度で示す対応を行う.加えて,哺乳類における性分化不全の例として,ヒトの性分化疾患症例の一つであるターナー症候群由来の組織を解析し,成人性腺由来の培養細胞においてGATA4,SOX9,WNT4などの発現に左右差を認めた.この結果は組織像より判断される生殖腺の形成程度とも関連しており,胎子期における性分化関連因子の発現が性腺形成に影響したことが推察された.今後,健常ヒト個体における同遺伝子の発現量との差を示した上で報告予定である.これらの遺伝子の胎子期における発現変化の可能性については,実験動物による検証を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
性逆転症系統遺伝子組換え動物を用いて,真性半陰陽個体における性分化関連因子の発現解析を行った.その結果,切片上において胎子期における雄性化の実行因子であるSox9の発現量の差が認められた.その発現は雄性生殖腺の形成程度と比例しており,雌性生殖腺を有する個体では殆ど認められなかった.この結果は,雄性生殖腺型性へのSox9発現の関与からすると妥当な結果であるが,同一遺伝子型を有する個体よりこれらの差が生じた事から,本研究が目的としているエピジェネティック修飾による性分化制御が行われていることが強く示唆され,本研究の重要性が再認識された.しかしながら,同個体群より摘出した生殖腺を用いた遺伝子発現量の解析においては,Sox9発現に有意な差は認めることが出来なかった.この結果は微小な胎子性腺を材料として用いたことにより有意差が隠されたためであり,遺伝子発現量においてもSox9に差が生じていると申請者は考えている.すなわち,同一遺伝子型内の雄性生殖腺の形成程度とSox9の調節機構を精査することにより,性分化の過程に対するエピジェネティック修飾の影響を明らかにすることが可能である.発現解析が難しい点についてはすでに検討済みで,次項の達成度で示す対応を行う.加えて,哺乳類における性分化不全の例として,ヒトの性分化疾患症例の一つであるターナー症候群由来の組織を解析し,成人性腺由来の培養細胞においてGATA4,SOX9,WNT4などの発現に左右差を認めた.この結果は組織像より判断される生殖腺の形成程度とも関連しており,胎子期における性分化関連因子の発現が性腺形成に影響したことが推察された.今後,健常ヒト個体における同遺伝子の発現量との差を示した上で報告予定である.これらの遺伝子の胎子期における発現変化の可能性については,実験動物による検証を行う.
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今後の研究の推進方策 |
性分化に関する知見はここ1年でも大きく前進しており,性分化関連因子の発現制御が当初予期していたよりも複雑な因子が関与することに加えて,厳密な時空間的制御を受けることが明らかとなっている.申請者らの現段階における検討結果でも真性半陰陽個体において雄性化の実行因子Sox9の発現量に差を認めており,より幼弱な日齢における性分化関連因子の発現が関与すると推測している.本年度ならびに次年度はこの状況を踏まえ,11.5日齢を中心に1/12日単位でグループ分けを行い複数の性分化関連因子の発現量を解析するとともにエピジェネティック修飾の解析を行う.前項(現在までの達成度)で示したように,動物の使用数を増やすと共に,試料の混合を行わないように変更することで,表現型毎の遺伝子発現量の差を得られるように留意する.発現解析のポイントはSox9発現の開始点および発現維持の2点に絞り直し,前者はSryおよびNr5a1に加えて雌性化因子であるFoxl2調節系を,後者に対してはFgf9およびFgfr,PtgD2およびそのレセプター類を介した調節系に焦点を合わせた解析を行い,エピジェネティック修飾の関与を明らかにする.さらに,組織内における発現の解析ならびに細胞および器官培養を用いた検証を行う.この過程では発現量解析に加え,RNA干渉ならびにエピジェネ攪乱による発現変動を惹起し,性分化が揺らぐか否かを検証する.これらの知見を基に性腺の性決定ならびに分化における影響が大きい時期の見極めを行い,GeneChipによる探索的な解析を行う.これらの検討を合わせて行うことで,性分化機構におけるエピジェネティック修飾について大きな知見を得ることが可能であると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請課題の遂行には,複数の性分化関連因子の発現量ならびに発現時期の解析が不可欠であるので,この解析に申請の分子生物学用試薬を用いる.性分化に関連する知見の蓄積は日々進んでいるので,この解析は次年度も続行する.これにより得られた知見を基に,申請のGeneChipによる探索的な解析を行い,どれらの遺伝子に対してエピジェネティック修飾が入るかを同定する.さらに,同定された因子類が組織内および細胞内で発現しているか局在について申請の抗体ならびに組織学的解析試薬を用いて同定すると共に,申請の細胞培養試薬を用いた培養系での検証を行う.この過程は次年度も続行するが,抗体類に関しては本年度申請分を継続使用する予定である.本研究の遂行には申請の遺伝子組換え動物類が欠かせないので,その繁殖ならびに維持のため飼料代等が必要である.成果発表および資料収集用の旅費,ならびに外国語論文の校閲用に謝金を本年度ならびに次年度に申請している.
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