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2012 年度 実施状況報告書

哺乳類の性分化機構とその進化に関わる細胞特異的エピジェネティック修飾の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23790386
研究機関神戸大学

研究代表者

横山 俊史  神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10380156)

キーワード国際研究者交流 / アメリカ
研究概要

性逆転症系統遺伝子組換え動物における真性半陰陽個体における性分化関連因子の発現解析を行い,雄性化の実行因子であるSox9の発現量の差が性決定因子Sryの発現量の左右差に由来することを推測させる結果を得た.その発現は雄性生殖腺の形成程度と相関し,雌性生殖腺を有する個体では殆ど認められなかった.加えて出生後の性腺における性分化関連遺伝子発現も同結果を裏付けていた(発表1).この結果は,雄性生殖腺型性へのSox9発現の関与からすると妥当な結果であり,同一遺伝子型を有する個体よりこれらの差が生じた事から,本研究が目的としているエピジェネティック修飾による性分化制御が行われていることが強く示唆され,本研究の重要性が再認識された.
雄性化を惹起するSertoli細胞におけるSOX9発現制御について培養条件下で検討した結果,Sox9発現は細胞形態により制御される事が明らかとなった.しかしながらSertoli 細胞の成熟ならびに性腺の性決定の実行を担う下流因子の発現制御には細胞接着を介する制御が関与することが明らかとなった(発表2).Sry発現が遅延した場合,Sox9の発現が維持されないことが報告されており,本研究が目的とする同一遺伝子型内の雄性生殖腺の形成程度とSox9発現制御が関連する可能性が推測された.
哺乳類における性分化不全の例として,ヒトの性分化疾患症例の一つであるターナー症候群由来組織における性腺分化の破綻機構解析を行った.その結果,雄性化因子であるSOX9,GATA4や雌性化因子であるWNT4の発現に左右差を認めるとともに,健常人個体との間に発現量の差を認めた.この結果は組織像より判断される生殖腺の形成程度とも関連しており,胎子期における性分化関連因子の発現が性腺形成に影響したことが推察された(発表3).これらの遺伝子の胎子期での発現変化については,実験動物で検証中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究の遂行は予定よりやや遅れているが,その原因は次に示すように試料として用いる遺伝子組換え動物に由来しており,以下の記載の対策より取り戻すことが可能と考えている.
研究に用いる真性半陰陽個体となる遺伝子型の動物の出生頻度ならびに出現割合が低く,十分量の実験個体を得る事が出来ていない.また,胎子の両側の性腺における発現量を比較しているため,材料として得られる遺伝子量は極めて少ない.加えて同一遺伝子型より真性半陰陽,半陰陽,雄性,雌性と表現型の異なる個体が得られる実験動物であるが,胎子の段階では将来どの表現型となるのか判別が付かない.
これらの点については,昨年度の段階で判明済みの問題点については既に改良を行い,繁殖効率など改善がされている.しかしながら,研究を行う中で目的とする遺伝子発現制御が当初想定よりも細かい時空間的制御に支配されていることが明らかとなり,解析群数の増加を余儀なくされた事が遅延の原因となっている.この点については,野生型の動物を用いた解析を先行させ,解析を行う群数ならびに関連遺伝子の減少を行っている.加えて,Sox9標識動物を用いることで,雄性化実行因子の解析については代替して結果を得ている.ヒト性分化異常症の症例については,当初計画の通り知見が増えている.

今後の研究の推進方策

性分化に関する知見はここ1年でも大きく前進しており,性分化関連因子の発現制御が当初予期していたよりも複雑な因子が関与することに加えて,厳密な時空間的制御を受けることが明らかとなっている.申請者らの現段階における検討結果でも真性半陰陽個体において雄性化の実行因子Sox9の発現量に差ならびに上流因子の発現の左右差を認めており,より幼弱な日齢における性分化関連因子の厳密な発現が関与すると推測している.
本年度はこの状況を踏まえ,10.5-11.5日齢を中心に1/12日単位でグループ分けを行い複数の性分化関連因子の発現量を解析するとともにエピジェネティック修飾の解析を行う.前項(現在までの達成度)で示したように,動物の使用数を増やすと共に,試料の混合を行わないように変更することで,表現型毎の遺伝子発現量の差を得られるように留意する.発現解析のポイントはSox9発現の開始点および発現維持の2点に絞り直し,前者はSryおよびNr5a1を中心とし,後者に対してはFgf9およびFgfr,PtgD2およびそのレセプター類を介した調節系に焦点を合わせた解析を行い,エピジェネティック修飾の関与を明らかにする.
さらに,組織内における発現の解析ならびに細胞および器官培養を用いた検証を行う.この過程では発現量解析に加え,RNA干渉ならびにエピジェネ攪乱による発現変動を惹起し,性分化が揺らぐか否かを検証する.これらの検討を合わせて行うことで,性分化機構におけるエピジェネティック修飾について大きな知見を得ることが可能であると考えている.

次年度の研究費の使用計画

本申請課題の遂行には,複数の性分化関連因子の発現量ならびに発現時期の解析が不可欠であるので,この解析に申請の分子生物学用試薬を用いる.性分化に関連する知見の蓄積は日々進んでいるので,これにより得られた知見を基にエピジェネティック修飾についての検討を行う.さらに,組織内および細胞内で発現しているか局在について申請の抗体ならびに組織学的解析試薬を用いて同定すると共に,申請の細胞培養試薬を用いた培養系での検証を行う.本研究の遂行には申請の遺伝子組換え動物類が欠かせないので,その繁殖ならびに維持のため飼料代等が必要である.成果発表および資料収集用の旅費,ならびに外国語論文の校閲用に謝金を本年度も申請している.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Cell-Cell contact is essential for Sertoli cell maturation.2013

    • 著者名/発表者名
      Toshifumi Yokoyama, Sung-Min Kim, Ferhat Ulu, and Yukiko Yamazaki
    • 学会等名
      Biomedical Sciences and Health Disparities Symposium
    • 発表場所
      University of Hawaii
    • 年月日
      20130408-20130409
  • [学会発表] ターナーモザイク患者の性腺分化とその破綻機構の分子基盤の解明2012

    • 著者名/発表者名
      長原大知,森實真由美,蛯名康彦,木下今日子,段上めぐみ,徳本順子,安田玲子,表原拓也,小林泰丈,辰巳敬哉,横山俊史,北川浩,山田秀人,星信彦
    • 学会等名
      第154回日本獣医学会学術集会
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      20120914-16
  • [学会発表] 性腺分化と性分化カスケードに関する分子形態学的研究2012

    • 著者名/発表者名
      木下今日子,長原大知,段上めぐみ,徳本順子,表原拓也,小林泰丈,辰巳敬哉,横山俊史,北川浩,星信彦
    • 学会等名
      第88回日本解剖学会近畿支部学術集会
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      2012-12-01

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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