研究課題/領域番号 |
23790390
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牛久 哲男 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60376415)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胃癌 / 肝転移 |
研究概要 |
1.胃癌手術検体1000例余りの臨床病理学的検討により、高肝転移性胃癌の臨床病理学的特徴の概要が明らかになった。胃癌手術検体の網羅的遺伝子解析データから、高肝転移性胃癌マーカーの有力な候補遺伝子の一つとしてClaudin-6を取り上げ、検索を進めた。この結果、Claudin-6は正常組織では胎生初期~中期の上皮細胞の一部でのみ発現する細胞接着遺伝子であり、腫瘍ではセミノーマ、胎児性癌、卵黄のう腫瘍、絨毛癌といった胚細胞腫瘍で100%高発現していることを世界で初めて明らかにした。胃癌においては予想通り、AFP産生胃癌をはじめとする高肝転移性胃癌で高頻度に発現が見られることが判明し、高肝転移性胃癌の抽出に有用であることが分かった。またClaudin-6は成人の正常組織では発現がなく、癌細胞の細胞表面に局在する分子であるため、抗体療法や免疫療法の極めて有力なターゲットであることを示すことができた。これらの成果は英文誌に投稿済みである。2.胃癌の抗体療法(ハーセプチン)のターゲットであるHER2遺伝子の発現・増幅について、胃癌手術検体100例余りを用いて、治療適応上の臨床病理学的問題点、および高肝転移性胃癌におけるHER2発現・遺伝子増幅状態を検討した。この成果は2012年度日本病理学会総会で発表予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で最も時間を要する胃癌1000例以上の詳細な臨床病理学的検討がほぼ終了した。高肝転移性胃癌の最も有力なマーカー遺伝子と考えられたClaudin-6についても検討を進め、英文誌に投稿、現在Minor Revise中となっている。現在胃癌診療において注目されている治療ターゲットであるHER2遺伝子についても検討を進めることができ、高肝転移性胃癌ではHER2遺伝子の発現頻度が高い傾向があることがわかった。胃癌診療上、重要な知見であり、さらに症例を追加し検討を進めている。これらの成果は学会発表、英文誌への投稿を予定(一部は採択済み)であり、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.Claudin-6以外の高肝転移性胃癌マーカーの候補遺伝子についても、遺伝子発現と臨床病理学的要素との関連について検討を進めていく。2.HER2遺伝子発現・増幅についてさらなる症例を蓄積し、治療適応上の問題点、高肝転移性胃癌におけるHER2発現・遺伝子増幅、他のマーカーとの関連について検討を追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最も高額なHER2遺伝子増幅の検討に必要なHER2-DISHキットは次年度の繰り越しによって購入済みであり、これを次年度も使用することができる。次年度新たに購入を予定しているのは、免疫染色抗体、関連試薬、および論文投稿費用、海外を含めた学会発表費用である。
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