研究概要 |
これまで本研究者の成果から、AFP産生胃癌をはじめとする肝転移をきたしやすい胃癌では、胚性幹細胞から胎生初期までの幼若な細胞で発現する遺伝子群が高発現し、高悪性度形質に関わっているという仮説を得た。本研究ではこの仮説をもとに、胚性幹細胞やiPS細胞の遺伝子発現データベースを検索し、幼若な細胞の上皮細胞のみで発現する細胞接着因子であるClaudin-6に注目、正常組織および癌組織計約1,000例におけるClaudin-6の発現パターンを網羅的に調べた。この結果、Claudin-6は性上皮腫、胎児性癌、卵黄嚢性腫瘍、絨毛癌といった幼若な細胞への分化を示す胚細胞性腫瘍に特異的に発現することを発見し、さらに体細胞由来の癌の中では、胎児型肺癌とAFP産生胃癌(胎児型胃癌、肝様腺癌を含む)で特に高発現することを見出した。Claudin-6は生後の正常組織では発現がなく、細胞表面に発現する分子であるため、理想的な治療ターゲットとしても期待される。 既存の胃癌の治療ターゲットとしてHER2遺伝子の発現・遺伝子増幅についても検討した。この結果、AFP産生胃癌ではHER2発現・遺伝子増幅の頻度が一般の胃癌よりも高く、抗HER2抗体薬治療の対象になりやすいことがわかった。 一方、本研究で行った胃癌の臨床病理学的検討の中から、転移を来たしにくい低悪性度の胃癌として腸型超高分化胃癌を見出し、その臨床病理学的特徴を明らかにした。 以上の研究成果は、国内外の学会および英文誌で発表、あるいは発表予定である。
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