研究課題/領域番号 |
23790392
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
阿部 晋也 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70596725)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ファージディスプレイ / MDS |
研究概要 |
ファージディスプレイ法は、一本鎖を表面に提示するファージをライブラリ化したものであり、理論上はどのような抗原に対する抗体も単離できる、非常に画期的な手法である。しかし、この方法は病理組織学的手法には積極的に応用されていない。そこで、病理切片などの病態が可視化できる人体材料を抗原としてファージ抗体の選択を行うことで疾患特異的に結合する「抗疾特異的患抗体」を作製することが可能ではないかと考えられた。さらにこの抗体をモノクローンにし、結合する抗原を同定することで疾患関連分子、予後因子の検索が可能になると考えられる。さらに得られた抗体が、細胞表面抗原などであった場合、そのまま抗体医薬化できる可能性もある。本研究では骨髄異形成症候群(MDS)症例の骨髄材料を用いて「予後不良MDS特異的抗体」の作製を目標とした。まず正常骨髄のティシューマイクロアレイにファージライブラリを反応させ、結合しないクローンのみを選択し(1stブロッキング)これを大腸菌TG1に感染させ、選択したファージのみを増殖させる。次に得られたクローンを予後良好骨髄のティシューマイクロアレイと反応させ、同様に結合しないクローンを回収し(2ndブロッキング)、同様の作業を行って、選択したファージを増やす。さらにこれを予後不良の骨髄と反応させ、ここでは予後不良骨髄のティシューマイクロアレイと結合するクローンのみを回収した。この工程を5回繰り返すことで、予後不良の骨髄標本にのみ結合できるファージ抗体を選択的に得ることができた。しかし、得られたクローン数が約3000クローンと膨大なため、今後適切なクローンの選別などが課題になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「予後不良MDS特異的抗体」の作製を目指すという点では、実際に予後不良のMDSのみに結合するファージ抗体を得ることができたので、達成度としては高いものであると考えられる。しかし、得られたクローン数が予想よりかなり多かったため、今後はさらに工夫が必要になると考えられる。また最終的にはこのファージ抗体がどの分子を認識しているかを解明しなければならず、現在までにそのメドがあまりたっていないため、総合的な達成度はおおむね順調といったところである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、多数のクローンから適切なクローンを選別するため、ファージ抗体の遺伝子配列解析、さらには結合しやすいクローンの選定をおこなう。各種細胞株より得られたcell lysateと得られた単クローンファージ抗体を反応させ、免疫沈降法を用いてファージ抗体に結合してくるタンパク抽出する。このタンパクをSDS-PAGEで分離し、CBB染色を行ってタンパクの分子量を確認する。さらに、得られたバンド部分のポリアクリルアミドゲルを切り出し、ゲル内消化してペプチド化したものを、MALDI-TOF/TOF法を用いて質量分析を行う。さらに質量分析で得られたデータから表面抗原などの抗体医薬のターゲットになるような分子を抽出し、それに対するファージから抗体遺伝子をクローニングする。ここから得られる抗体遺伝子は可変領域の抗体遺伝子だけであるので、これを抗体のFc部分の遺伝子を搭載しているプラスミドに導入し、完全ヒト型抗体の作製を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ファージ抗体の選別のためにシークエンス確認用の試薬、さらには質量分析関連試薬、質量分析機器使用料に大部分の予算を使用する。また、本研究に関わる学会発表や論文投稿に小規模な予算を使用する予定である。
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