研究概要 |
乳腺神経内分泌癌 (breast neuroendocrine carcinoma, B-NEC) の発生機構に関し、一部のB-NECの背景乳腺組織内に異型のないNE細胞がisolated/scattered pattern、clustered patternないしcircumferential patternで存在する"NE cell hyperplasia"の概念を初めて提唱し、前癌病変としての意義を示した (J Clin Pathol, in press. USCAP, 2012)。さらに、B-NECと乳管内乳頭腫の発生学的な関連性について報告を行った (J Clin Pathol, 2011)。 神経内分泌型非浸潤性乳管癌 (NE ductal carcinoma in situ, NE-DCIS) が低悪性度B-NECの浸潤前病変であることを以前我々は提言したが、高悪性度B-NECの前駆病変と推察されるnecrotic type NE-DCISを追記した (Pathology, 2012)。 血性乳頭分泌の臨床症状とNECの関連性について分析を行い、本症状を呈する乳腺疾患の17% (24/144)、本症状により発見される乳癌の44% (24/55) がB-NECに相当すること、血性分泌症状がB-NECの独特な血管構築に起因することを明らかにした (Breast, in press. USCAP, 2011)。 浸潤性乳癌1299症例をB-NEC 69症例とB-non-NEC 1230症例に分けて両群を比較分析し、B-NECの臨床的意義、生物学的特性を明確に示した (USCAP, 2012)。 また、アポクリン腺症/DCISと密接に関連した、基底膜物質を過剰に産生する乳腺myoepitheliosisの症例を初めて報告した (Pathol Int, 2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
B-NECの発生機構および生物学的特性の病理学的解析に関し、国内・海外の学会で多数の発表を行い [USCAP, 2011(x2) & 2012(x2) 等]、欧文論文を数本作成・投稿して掲載 (受理) された (J Clin Pathol, 2011 & in press. Pathology, 2012. Breast, in press. Pathol Int, 2011)。そして、今回の研究のメインテーマである乳腺"NE cell hyperplasia"の検証に成功し、2012年3月にカナダのバンクーバーで開催されたUnited States & Canadian Academy of Pathology (USCAP) Annual Meetingで発表を行い、英国の病理誌であるJournal of Clinical Pathologyに掲載受理された。
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次年度の研究費の使用計画 |
既存の器材の老朽化、および、欧文論文投稿や学会発表の際の鮮明なFigures(図)の作製のため、顕微鏡用デジタルカメラ 「DP72」(1,291,000円)の新規購入を最優先とする。繰越金(788,210円)は全て、その設備備品費に当てる。その他、消耗品費として、免疫組織化学、CGH/LOH等、旅費等として、国内外における学会成果発表、欧文論文の校正、英文学術専門誌への投稿等に使用する予定である。
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