研究概要 |
腫瘍内に浸潤する組織球 (tumor-associated macrophage: TAM)はM1型とM2型に分けられ、M1-TAMは主としてtumor suppressiveに、M2-TAMは主としてtumor progressiveに働いていると考えられているが、悪性リンパ腫におけるその役割は確定していない。そこで、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (DLBCL), ホジキンリンパ腫 (HL)についてM1-TAM, M2-TAMの役割を検討した。 DLBCL101例の検討において、CD68+/CD163+(二重免疫染色)を示すM2-TAMが多いと有意に予後不良であった。 DLBCLのうち既存リンパ濾胞を残しながら濾胞間領域で増殖するDLBCL (DLBCL-IF)31例の検討において、DLBCL-IFは通常の組織所見を示すDLBCLより有意に予後良好であった。また、polymorphousな細胞浸潤を伴うDLBCL-IF16例の検討において、M2-TAMの少ない患者は全て観察終了時点(観察期間; 8~42.5ヶ月, 中央値; 22.3ヶ月)で生存していた。 HL82例の検討において、M2-TAMが多いと有意に予後不良であった。また、HLのうち混合細胞型に限定すると、M1-TAM[CD68+/HLA-DR+(二重免疫染色)]が多い混合細胞型HLは有意に予後良好であった。 主な対象目標としていたリンパ腫サブタイプに関してM1-TAM, M2-TAMの役割を検討することができた。具体的にはDLBCL, HLにおいてM2-TAMはtumor progressiveに働いていると考えられ、混合細胞型HLにおいてM1-TAMはtumor suppressiveに働いていると考えられる。DLBCL, HL, 混合細胞型HLにおいてM1-TAM, M2-TAMを評価すれば予後予測が可能である。
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