研究課題/領域番号 |
23790399
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原 重雄 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10590648)
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キーワード | SNX2 |
研究概要 |
甲状腺癌組織を用いた免疫染色では、SNX2は甲状腺乳頭癌、濾胞癌、未分化癌(各10例)のいずれにも瀰漫性に陽性であり、組織型による違いはみられなかった。一方、正常甲状腺組織では、高円柱状濾胞上皮細胞に一致してSNX2が陽性であり、扁平濾胞上皮細胞は陰性のものが多かった。形態計測による評価では濾胞上皮の細胞高とSN2陽性所見に相関がみられた(r=0.77)。高円柱状濾胞上皮はactive thyrocyteとされており、SNX2はactive thyrocyteに選択的に分布している可能性が考えられた。Sortilinはactive thyrocyteに高発現することが知られている蛋白であり、連続切片を用いた免疫組織学的評価ではSNX2とsortilinはいずれも高円柱状濾胞上皮細胞に分布していた。甲状腺機能亢進状態であるバセドウ病や機能性結節の多くでは濾胞上皮は瀰漫性にSNX2陽性であり、SNX2がactive thyrocyteを示すマーカーであることが示された。培養甲状腺濾胞上皮細胞(FRTL-5)を用いた検討では、TSH刺激によりSNX2発現が増加することをWestern blott法により確認し、細胞面積ならびに細胞周囲長を計測したところ、いずれもTSH刺激後に大型化していることから、活性化濾胞上皮細胞では細胞サイズが増加し、SNX2発現の増加することがin vitroでも示された。各臓器についてSNX2分布を検討したところ、SNX2 mRNAは全臓器に発現がみられたのに対し、免疫染色による評価では各臓器に分布するマクロファージ、結腸上皮、胃上皮、膵ラ氏島に陽性像が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroでの甲状腺培養細胞(FRTL-5)を用いた検討でいくつか結果が得られたが、FRTL-5培養条件の設定が難しく、十分な進展が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでの検討からパラフィン切片を用いた免疫染色による組織学的評価方法に切り替える。甲状腺での検討に関しては論文化済(Kanzawa M et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol, in press)であるため終了とし、マクロファージマーカーとしてのSNX2の機能についての評価を行う。すでに知られているマクロファージ関連マーカー(CD163, CD86など)との比較を免疫組織学的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は平成24年度研究費全額をin vitroでの実験に費やす予定であったが、研究期間を考えると残り1年で論文化することは困難であり、残金\484,982の時点で平成25年度に繰り越すこととした。平成25年度分の研究費と併せ、病理切片での免疫組織学的検討、甲状腺検討論文化の費用に回すこととした。主な使用用途としては、パラフィン切片で使用する抗体を含む免疫組織学的検討に用いる試薬消耗品、甲状腺論文(Kanzawa M et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol, in press)の別刷代である。
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