研究課題/領域番号 |
23790402
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
仙谷 和弘 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30508164)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胃癌 / 癌幹細胞マーカー / 転移巣 / サイトケラチン |
研究概要 |
本研究では、トランスクリプトーム解析等を用いて、特に消化管腫瘍の転移に関連する遺伝子に焦点を当てて検討を行った。平成23年度は、まず転移形成において重要な役割を果たしていると考えられる3種類の癌幹細胞マーカー(ALDH1, CD44, CD133)の胃癌原発巣における発現と臨床病理学的意義についての解析、および原発巣と転移巣における陽性率の比較や形態像の変化について検討を行った。胃癌190例の原発巣における各マーカーの陽性率はそれぞれ55%、62%、9%であり、いずれも進行胃癌で発現が亢進し、陽性群は陰性群と比較して予後不良であった。また、ALDH1とCD44は原発巣よりも転移巣で陽性率が高く、特にALDH1はdiffuse type胃癌において有意に転移巣での発現が亢進することが明らかとなり、転移機構におけるこれらのマーカーの重要性を明らかとした。次に、様々な原発不明癌の鑑別に有用とされるサイトケラチン(CK)パターンと癌関連分子の関係について胃癌870例を用いて検討したところ、CK7は胃型粘液マーカーであるMUC5ACやMUC6の発現と相関し、CK20は腸型粘液マーカーあるいは分子であるMUC2やCDX2と相関した。一方、CK7とCK20をいずれも発現しない胃癌は組織型として低分化型に多いことが明らかとなったが、既存の癌関連分子であるp53, EGFR, β-cateninとの相関は認められなかった。最後に、胃癌の原発巣と転移巣の比較で、転移巣で増加したのはNull型粘液形質やCK7とCK20を両方とも発現しない成分であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、消化管癌の転移機構に関与すると考えられる複数の分子(癌幹細胞関連分子、粘液形質関連分子、癌関連分子)に関して実際の臨床検体(原発巣と転移巣)を用いた免疫組織化学的解析が終了した。特に転移巣で増加した成分、すなわち組織像ではtub2やpor1、生物学的にはN型粘液形質やCK7-/CK20-を示す胃癌を標的にした治療戦略を考える必要があると考えられた。以上より、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
消化管癌の転移機構に関与する既知の分子のみならず、CASTライブラリー、SAGEライブラリー、マイクロアレイのスクリーニング、定量的RT-PCRによる多数症例の検証を行いながら新規消化管癌転移関連遺伝子の探索を行う予定である。候補遺伝子が同定でき次第、臨床検体を用いて免疫染色を行い、その発現、分布を解析することで再現性を確認する。さらに新規癌幹細胞マーカーとして応用可能か分子であるかについて検討する。また、候補分子の癌幹細胞との関連や生物学的機能解析についても解析を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に引き続き、候補遺伝子の発現を明らかにするため、以下の試薬を使用する予定である。一般試薬は、ピペットチップ、エッペンドルフチューブの他、各種buffer作成のための試薬が該当し、遺伝子工学試薬は、逆転写酵素や各種primer、制限酵素等が該当する。PCR消耗品は、taq polymeraseやリアルタイムRT-PCRで使用するSYBR GREEN等が該当する。組織染色試薬は免疫染色の1次抗体、2次抗体、発色試薬、核染色試薬(ヘマトキシリン)、ELISA測定に必要な試薬や抗体等が該当する。1次抗体は、市販されているものであれば購入し、市販されていなければ、ラビットに免疫し抗体を作成する予定である。
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