研究課題/領域番号 |
23790408
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
井上 享 大分大学, 医学部, 医員 (90468009)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 終末期腎 / 腎癌 / ゲノム異常 |
研究概要 |
我々は終末期腎患者に発生した腎細胞がんのゲノム異常に関して、多数例の網羅的な解析を初めて報告した。(Inoue T et al. Cancer Science 2012 3)さらに、65症例それぞれのゲノムプロファイルのクラスター解析をすることで、終末期腎癌のゲノムプロファイルは2つに大きく分類されることを初めて発見した。一つは孤発例に多いとされる淡明細胞がんで、もう一つは乳頭状腎がんのゲノム異常に極めて類似したグループであった。このグループには、組織学的には終末期腎がん患者で特異的にみられる組織型(ACD-associated RCC, clear cell-papillary RCC)などのタイプが多く含まれていた。また、透析歴によるゲノム異常の違いも明らかにし、本邦では特に長期透析歴を持つ患者が最も多いと考えられ、非常に重要な知見であると考えられる。具体的には透析歴が長い腎がん患者では乳頭状腎癌のゲノム異常のタイプが多く含まれていた。逆に透析歴の短い患者では淡明細胞がんが多く、透析の影響を殆ど受けていないことが示唆された。また、腎癌患者に含まれていた後天性のう胞および異型のう胞の上皮細胞も同時に採取し、それぞれのゲノム異常を解析した。その結果、組織学的に前癌病変とされていた異型のう胞にも既にゲノム異常を認めるという事実も確認した。一方、simple cystにはゲノム異常はほとんど認めなかった。このことから、乳頭状腎癌に類似したグループでは、異型のう胞から多段階に発がん、癌化のプロセスを踏んでいく事が示唆された。これらのゲノム異常に関する成果をもとに、我々は癌組織からRNAを採取し、トランスクリプトーム解析に移行したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のようなゲノム異常の成果から更に発展させ、トランスクリプトームをマイクロアレイを用いて解析し、更なるメカニズムの解明を目指している。しかしながらRNAを採取する困難さから多数例の解析には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
上記トランスクリプトームのマイクロアレイを推進したいと考えている。更には前癌病変も同様にメカニズムの解明に欠かせないため同じく解析予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記トランスクリプトームのマイクロアレイに伴う研究費の使用を考えている
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