研究課題
がんの悪性度を規定する分子基盤を明らかにすることは、がんの進展機構を解明する上で、また新規の分子標的療法の開発につながる重要な研究案件である。本研究の目的は、その分子基盤の一端を明らかにすることである。申請者はこれまでにKRAS変異肺腺がんの予後が他の肺腺がんと比べて不良であることを示してきた。さらにKRAS変異肺腺がんの中でも細胞増殖活性が高い群と低い群があり、KRAS変異/高増殖活性を示す群が、最も予後不良であることを示してきた。従って、KRAS変異/高増殖活性を示す肺腺がんの悪性度を規定する因子を同定することは、がんの悪性度を規定する分子基盤を解明する上で有用な事であると考えられる。申請者らは既に、遺伝子発現マイクロアレイを用いたKRAS下流分子の網羅的解析から、肺がんの進展に関わる候補癌抑制遺伝子を複数同定してきた。申請課題では、複数のKRAS下流分子の発現プロファイルをみることで、肺腺がんの悪性度を規定する分子基盤を明らかにすることを目標としている。 当該年度では、マイクロアレイ解析によって抽出された分子群の発現レベルを、先ずはKRAS導入細胞で検証し、マイクロアレイ解析の結果との整合性を求めた。申請の表に記した分子群の殆どすべての発現変動が確認され、マイクロアレイの結果の正当性が支持された。23年度は特に、ケモカイン系3分子(CXCL7 (PPBP), CCL3, CXCL2)の発現解析を原発性肺癌病変で行い、これらの発現レベルが高度に上昇している病変があることを確認している。ほぼ計画通りの進行状況である。
2: おおむね順調に進展している
前述の如く、当該年度では、マイクロアレイ解析によって抽出された分子群の発現レベルを、先ずはKRAS導入細胞で検証し、マイクロアレイ解析の結果との整合性を求めた。申請の表に記した分子群の殆どすべての発現変動が確認され、マイクロアレイの結果の正当性が支持された。23年度は特に、ケモカイン系3分子(CXCL7 (PPBP), CCL3, CXCL2)の発現解析を原発性肺癌病変で行い、これらの発現レベルが高度に上昇している病変があることを確認している。ほぼ計画通りの進行状況である。
申請書の計画とおりに、以下の如くに進める。(1)mRNA発現解析 肺腺がん190例の手術材料から抽出された高悪性度群(再発例)20例、低悪性度群(無再発例)40例(新鮮凍結材料に限定する)のうち、まず半数にあたる30例を対象として定量的RT-PCR法によるmRNAの発現解析を行う。解析に当たっては、マイクロダイセクション法によって腫瘍細胞と非腫瘍部気道上皮細胞をとりわけた後に定量的RT-PCR法を行うこととする。採取、保存されている新鮮凍結検体の質に関しては、前述のこれまでの研究成果に示す如く、本課題の研究項目の完遂に十分な質のものである。(2)蛋白質発現解析 市販の特異抗体を用いてウェスタンブロット法、およびパラフィン切片上で免疫染色法を行い、蛋白質の発現レベルを半定量的に解析する。特に、免疫染色法の結果から得られた染色様式を解析し、発現レベル半定量化のための閾値設定の検討を行う。
申請書の購入計画とおりに消費する。 ほとんどが実験試薬類の消耗品である。高額機器、打ち合わせのため出張費には使用しない。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
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