研究課題/領域番号 |
23790413
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松原 大祐 自治医科大学, 医学部, 助教 (80415554)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | BRG1 / BRM / EMT / Lung adenocarcinoma |
研究概要 |
SWI/SNF chromatin remodeling complexesの二つのcore factorであるBRG1, BRMは腫瘍抑制因子としての働きが示唆されるも、肺癌での検討は十分ではない。我々は肺腺癌細胞株15株、自治医大肺腺癌症例93例の組織切片、442例の原発性肺線癌の遺伝子発現データを用いて、肺線癌におけるBRG1, BRM欠損が上皮間葉系転換(EMT)形質と関連することを見出した。すなわち、肺腺癌細胞株において、15株中6株がBRG1変異型であり、いずれもBRG1の遺伝子レベル、タンパクレベルの発現低下が認められるのみならず、E-cadherin、気管支上皮マーカー(TTF1, CK7, MUC1)の発現の低下と、vimentinの高発現が見られるEMT phenotypeであるのに対し、BRG1野生型では、BRG1、E-cadherin、気管支上皮マーカーの発現は高く、vimentinの発現は低いBronchial Epithelial phenotypeであった。また、EGFR、MET、HER2の変異・増幅はBRG1野生型に高頻度にみられるも、BRG1変異型ではみられなかった。BRM欠損もまた、EMT phenotypeに高頻度にみられた。93例の肺腺癌症例を免疫組織化学的に検討したところ、BRG1, BRMの欠損した症例はそれぞれ10%程度みられたが、低分化で、high gradeなsolid predominant adenocarcinomaで多くみられ、E-cadherin、気管支上皮マーカーの発現低下を伴った。また、BRG1欠損例は、EGFR変異と相互排他的であり、lepidic growthを欠いた。442例の遺伝子発現データからは、BRG1, BRMの欠失はやはりEMT phenotypeに多く、かつ、有意に予後不良であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、論文もほぼ完成しており、Journal of Pathologyに投稿予定である。2012年4月にはAACR(米国癌学会)でこれまでの研究内容を発表した。我々の知る限り、BRG1, BRMの欠損が、肺腺癌におけるEMTと関連していることを指摘した論文はいまだない。
|
今後の研究の推進方策 |
TET-ON,OFFシステムを用いて、ドキシサイクリン存在下でBRG1, BRMの遺伝子の発現、抑制を起こす細胞株を作り、3次元培養下での形態変化、浸潤能、EMT関連マーカーの発現の変化について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
EMT phenotypeにおいて、癌関連遺伝子において、Genome wideなLoss of dymethylationが示唆され、それに、クロマチンリモデリング因子が関わっていると推測される。上記のTET-ON,OFFシステムによる細胞株を用いて、E-cadherin等のMethylation statusをMSPアッセイで調べ、もしも、違いがある場合には、先端研のゲノムサイエンス部門の油谷浩幸先生にお願いして、Infiniumアレイによる45万箇所のメチル化を測定していただく。マウスを使った実験としては、これらの細胞株をヌードマウスの尾静脈にうち、肺内に腫瘍を形成させた上で、BRG1,BRMを発現、抑制した場合の浸潤、転移、薬剤感受性などについて検討する。余力があれば、TET ON, OFFシステムをもちいたトランスジェニックマウスを作成する。
|