現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画が下記の様に達成され、腎細胞癌において主要な役割を果たすEMT誘導因子がTNF-αであることが判明した。1.TNF-αが腎細胞癌のEMT誘導因子および予後因子である:腎細胞癌由来の細胞株である786-O, ACHN, Caki-1, Caki-2, SW839, KU20-01の培養系にEMT誘導因子であるTGF-β, TNF-α等の増殖因子を添加し、E-カドヘリン発現抑制、ビメンチン発現の亢進を指標に腎細胞癌由来細胞株にEMTを誘導する因子の特定を行った。その結果、腎細胞癌由来細胞株ACHN, 786-OではTNF-αがEMTを誘導する因子であり、in vitroでの遊走能・マトリゲル上での浸潤能を増加させることを確認した。なお、代表的なEMT誘導因子であるTGF-β添加では遊走能・浸潤能が増加しないことが判明した。そこで腎細胞癌切除検体97例におけるTNF-α発現を免疫組織学的に調べたところ、TNF-α高発現症例は、経過観察中に死亡しており、腎細胞癌の悪性度とTNF-α発現の相関が示唆された。2.TNF-αによるEMT関連転写因子、細胞外マトリックス分解酵素発現の誘導:上記1において腎細胞癌のEMTに関与していることが判明したEMT誘導因子であるTNF-αを腎細胞癌由来の細胞株の培養系に添加したところ、SnailやSlug発現が誘導されることが確認された。さらに代表的な細胞外マトリックス分解酵素であるMMP9発現およびヘパラナーゼ発現が亢進することがわかった。3.TNF-αは癌幹細胞マーカー発現を誘導する:TNF-αを添加するとCD24発現が抑制され、CD44発現が亢進した。即ち、TNF-αが腎細胞癌の癌幹細胞マーカーを誘導することが判明した。
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