研究概要 |
1. 腎細胞癌におけるTNF-alpha, CD44の発現と臨床病理学的因子の相関: 腎細胞癌外科切除検体117例を対象にEMT誘導因子であるTNF-alpha発現、癌幹細胞マーカーであるCD44発現を免疫組織化学的に検討した結果、TNF-alpha, CD44発現は腎細胞癌の原発巣の進展度、遠隔転移、組織学的異型度と相関していることが判明した。また、TNF-alpha, CD44高発現例は低発現例に比べ、早期に再発し、死亡率が高いことがわかった。 2. 腎細胞癌におけるTNF-alpha, CD44発現の関連:TNF-alpha高発現例は低発現例に比べ有意にCD44発現が高い傾向がみられ、腎細胞癌組織においてTNF-alphaがCD44発現を誘導していることが示唆された。 3. TNF-alphaによる786-OとACHNのEMT誘導:TNF-alphaを添加して腎細胞癌由来細胞株786-OとACHNを培養するとE-cadherin発現が低下し、vimentinとMMP-9発現が上昇するとともに、in vitroにおける遊走能と浸潤能が亢進した。また、興味深いことにTNF-alpha投与により癌細胞のTNF-alpha mRNA発現が誘導された。 4. TNF-alphaによるCD44発現の誘導:TNF-alpha投与により癌細胞のCD44 mRNA発現が上昇した。イムノブロット法によりCD44蛋白発現の上昇も確認された。 5. スニチニブ治療後癌組織におけるCD44発現の相関: スニチニブ治療後の腎細胞癌原発巣では未治療組織に比べ、有意にCD44発現が上昇していた。同様にスニチニブ治療後の転移性腎細胞がん組織は未治療の症例に比べCD44陽性細胞の比率が有為に増加していた。 6. スニチニブ治療と微小血管密度の相関:スニチニブ治療と微小血管密度の間には有意な関連は認めなかった。
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