研究概要 |
Sorafenibなど多標的チロシンキナーゼ阻害薬は肝細胞癌において、従来の抗癌剤より良い効果が得られたと報告されたが、腫瘍の浸 潤・転移など複雑な生物学的現象に与える影響や機能について解明されていないところが多い。本研究では、ヒト肝細胞癌株と肝細胞 癌の進行症例に相当する肝細胞癌転移モデルを用いて、分子標的薬の癌の進展に与える影響とその機序について解明し、分子標的薬の 治療効果予測バイオマーカーの探索を目的とする。 平成23年度では、sorafenibのin vitro, in vivoにおいて各肝細胞癌株(KYN2, Li7, HepG2, KIM1, PLC/PRF/5)に対する影響につい て研究し、sorafenib使用の臨床症例について検討した。In vitroでは、sorafenibによる増殖抑制効果の違う2群間(KYN2, HepG2, KI M1>PLC/PRF5, Li7)は、DNA microarrayでは、2群間にIRS1, FGFR3, FGFR4, ERBB3, LYNにおいて有意差が認められた。Western blott ingの結果、KYN2においてLYN、IRS-1のリン酸化はsorafenib添加によって減少するが、Li7においては変化がみられない。Southerblotting法でsorafenib添加によるFGFR3,4の増加が認められた。In vivoでは 、sorafenib投与により、KYN2のマウス肝内転移抑制傾向と生存期間延長がみられ、KYN2とLi7間にCK19, FGFR4の発現に差が認められ た。Sorafenib投与の肝細胞癌臨床例について検討した結果、有効例では、腫瘍内と非腫瘍部の血管内皮障害が認められた。現在、sorafenibによる肝細胞癌肝内転移抑制機序について、LYN, IRS-1, FGFR3, FGFR4を含む各タンパクの発現、リン酸化を中心に臨床症例も用いて検討中であり、sorafenib の肝細胞癌における治療効果の予測マーカーと効果判定への応用が期待できる。
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