研究課題
本研究の主たる課題である「肺癌における免疫染色を用いた新しいEGFR(上皮増殖因子受容体)遺伝子変異検出法の確立」に関して133肺癌患者のデータ解析を行い,この研究結果を英文報告した(Kawahara et al.Lung Cancer 2012. 39-44).133患者(切除組織,生検組織,細胞診材料を使用)における免疫染色の結果は,陽性判定27.8%,陰性判定63.9%および判定不可能8.3%であった.免疫染色とDNA遺伝子変異解析の一致率は陽性判定患者94.6%および陰性判定患者90.6%であり,高い一致率を示した.さらにゲフィチニブ投与が施行された42患者の治療効果判定を行った結果,免疫染色で過剰発現した患者群は,免疫染色発現なしあるいは弱い発現患者群と比較して,優位に治療効果の延長が認められた.従って,免疫染色で明らかに陽性と判定された患者においては,ゲフィチニブ投与の迅速な対応ができると考えられた.また,肺癌の組織/細胞の形態診断と同時にEGFR遺伝子変異抗体を用いた免疫染色を併用することにより,医療費の削減にもつながる可能性が示唆された.本研究における問題点として,免疫染色で判定不可能が11患者あり,このうち細胞診材料が6患者であった.この6患者はすべてEGFR遺伝子変異陽性であるため,固定法の変更が不可欠であると思われる.この点に関しては,昨年度から引き続き追加研究を進めており,液状細胞診固定液を用いることが重要性であることが判明してきた.平成25年度にこの点を解析して,新しいEGFR遺伝子変異検出法の確立を目指したい.
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していた研究内容は達成できた.英文論文報告もできているので順調に進展していると考える.1.免疫組織/細胞化学を用いて迅速なEGFR遺伝子変異検出のためのアルゴリズムの確立2.体腔液における原発/再発肺癌患者のEGFR遺伝子変異の確認
本研究の主たる課題である「肺癌における免疫染色を用いた新しいEGFR(上皮増殖因子受容体)遺伝子変異検出法の確立」を論文報告することができた.今後は,培養細胞および臨床検体を用いて,EGFR遺伝子変異抗体の最適な染色方法について固定液における影響を中心に調査したい.
培養細胞および臨床検体を用いて,EGFR遺伝子変異抗体の最適な染色方法について追加検討を行う.そのため,液状細胞診固定液や15%中性緩衝ホルマリンなどさまざまな固定液や抗体を随時購入する.また,欧州におけるEGFR遺伝子変異検出状況や再発肺癌への病理学的対応について調査し,本研究に役立てたい.
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Lung Cancer.
巻: 78 ページ: 39-44
10.1016