研究課題
本研究は、ヒトポリオーマウイルスであるJCウイルス(JCV)遺伝子の新たな転写後調節機構を明らかにし、宿主細胞内におけるウイルス増殖の制御機構を解明することを目的としている。本研究では特にウイルス後期遺伝子の転写産物について詳細に解析を行った結果、JCV感染細胞において、JCV後期遺伝子方向の転写産物は約5kbのDNAゲノムから一周以上の長さで転写されていることが判明した。この長鎖RNAはpre-mRNAとして機能すると考えられ、新たに判明したスプライシングパターンにより後期タンパク質を発現する成熟mRNAが産生されることが明らかとなった。後期遺伝子mRNAは、Agnoproteinコーディング領域内のスプライシングによりタンデムリピート配列が生じていた。この後期遺伝子pre-mRNAの特殊なスプライシングが、ウイルスタンパク質の発現、ウイルス増殖に与える影響を検討するため、JCV Mad1株のAgnoproteinコーディング領域内の2か所のアクセプター配列に変異を導入したウイルスゲノムを作製し、感染許容細胞であるIMR-32細胞に導入し、ウイルスmRNA、タンパク質発現量を継時的に解析した。その結果、Agnoprotein領域内でのスプライシングは後期mRNAの産生に必要であり、2か所のアクセプター配列の内どちらか一方のみを利用することでより効率的なスプライシングが起こり後期mRNA量が増加することが判明した。さらにIMR-32細胞で継代されたJCV株では、Agnoprotein領域内に15塩基の欠失があり、2か所の内一方のアクセプター配列が機能しないことで効率的に後期遺伝子を発現していることが明らかとなった。本研究で得られた後期遺伝子の新たな転写後調節機構は、JCVの細胞内増殖を規定する新たな因子であり、今後JCV増殖抑制法を開発する上で有用な知見と考えられる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 9;8(10) ページ: e76668
10.1371/journal.pone.0076668.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 12;110(46) ページ: 18668-73
10.1073/pnas.1311457110
J Gen Virol.
巻: 94(Pt 6) ページ: 1357-64
10.1099/vir.0.050740-0
Jpn J Infect Dis.
巻: 66(2) ページ: 126-32
http://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/