研究課題/領域番号 |
23790432
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上羽 悟史 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00447385)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 炎症 / 移植免疫 / 造血幹細胞 / GVHD / 骨芽細胞 |
研究概要 |
ドナーCD4 T細胞による骨芽細胞の特異的障害機序について、障害過程の可視化するため、GVHD(+)群において骨芽細胞が消失する7日目まで、経時的にフローサイトメトリー解析を行った。エフェクター型CD4 T細胞の骨髄浸潤は移植後3-7日目に著明になり、14日目にかけて増加した。非脱灰凍結骨切片について経時的にalkaline phospotase (ALP)染色を行い、骨芽細胞の分布を検証したところ、ドナーT細胞の浸潤動態と一致して、移植後4日目およびALP陽性骨芽細胞が骨髄腔内より消失した。これらのデータと一致して、Runx2, Osterix, Osteocalcineなどの骨芽細胞系列に発現する遺伝子は移植後3日目から7日目にかけて著減した。この傾向は骨系列細胞の中でも主に骨芽細胞選択的に発現するKeratocanにおいて著明である一方、骨細胞に主に発現するDmp1や、内皮細胞特異的遺伝子Plvapの抑制は軽度であった。また、線維芽細胞に主に発現するCol1α2についてもOsteocalcin, Keraと同程度の発現抑制を認め、骨芽細胞とともに線維芽細胞も骨髄GVHDの標的となっている事が示唆された。 骨芽GVHDにCD4 T細胞による骨芽細胞のallo-MHC II認識が関与するか検証するために、間質系がsyngenicかつ血球系がallogenicな骨髄キメラマウスをレシピエントとしてallo-HSCTを行ったところ、骨髄におけるB細胞の回復は同骨髄キメラにおいても重度に抑制されていたが、骨芽細胞障害は部分的な回復を認めたことから、骨芽細胞抑制にはドナーT細胞による間質系の認識が部分的に関与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的・計画に従い、移植早期における骨芽細胞障害の時間的な動態を明らかにする事が出来た。また、骨髄GVHDにおいては骨細胞および内皮細胞は障害を受けない一方で、線維芽細胞が骨芽細胞と同様に強い抑制を受けており、新たな標的細胞を見出すことができた。さらに、これらの障害の分子機序としては、部分的にMHCを介したT細胞による標的細胞の認識が必要であることも明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1. ドナー由来CD44hiエフェクターCD4およびCD8 T細胞について、次世代DNAシークエンサーを用いた包括的遺伝子発現解析を行い、ドナー由来エフェクターCD4 T細胞に選択的に発現する細胞膜結合型または分泌型タンパク質を検索し、GVHD発症マウスにおける発現の分布およびkiteticsからエフェクター分子の候補を絞り込む。2. 絞り込んだエフェクター分子の候補についてin vitroにおける機能的な検証を行うため、骨芽細胞分化誘導・培養系に候補分子のリコンビナントタンパク質を添加する、または骨芽細胞(前駆細胞)とドナー由来エフェクターCD4 T細胞との共培養系における中和抗体などを用いた阻害実験を行う。In vitroで骨芽細胞(前駆細胞)のアポトーシス、分化・増殖に関与が認められた分子については、さらにin vivoでの絞り込みを行う。3. 絞り込んだエフェクター分子の候補について本来骨髄GVHDの誘導能を持たないCD8 T細胞へ候補分子の遺伝子導入を行い、同細胞を用いたallo-HSCTモデルにおける骨髄GVHDの発症を評価する(Gain-of-function)。さらに、遺伝子欠損マウス、中和抗体などを用いた予防・治療実験を行う(Loss-of-function)。これらの解析を通じて骨髄GVHDのエフェクター分子を同定するとともに、これを標的とした移植免疫不全克服に向けた応用可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では遺伝子組み換えマウス、中和抗体、アンタゴニストを駆使してGVHDモデルマウス生体内における血球細胞の動態制御と間質系細胞障害を解析する予定である。本研究を遂行する上で必要な研究経費には多数の実験動物の購入、維持費用、実験試薬には抗体、蛍光色素、細胞培養関連試薬、分子生物学試薬が考えられ、またプラスチック器具には、培養および一般実験で使用するピペット、プレートなどの購入費用を想定している。
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