研究課題
代表者は腫瘍種類による血管構築の差に着目し、それによる難治性の解析を進めてきた。特に副作用の少ない抗腫瘍治療を提供できることが臨床治験の結果からも実証されつつあるナノ粒子を用いた薬剤が実際に奏効する腫瘍はまだ限られているところ、血管制御との併用によって薬効を発揮させられる可能性を膵癌などの動物モデルで示してきた。しかし、その基盤となる分子メカニズムについては詳細が明らかでないことから本研究では、ナノ粒子の血管透過性の増減を説明する分子メカニズムの解明を目的として進めてきた。本研究期間昨年度までに、P*の切除された断片が血管におけるナノ粒子の漏出性を直接制御しうることを見いだした。またこれまでの検討の結果、P*は内皮細胞と壁細胞の接触後に発現が低下する可能性を見いだしており、長期的な接着には関与しないと考えられた。そこで本年度はP*断片による平面培養内皮細胞シートからのナノ粒子漏出性の直接的な制御について検討をすすめた。その結果、すでに全長V*の結合分子として知られているP**の発現を抑制すると、P*断片による血管内皮細胞シート透過性への影響が逆になり、透過性の亢進が確認された。さらに、P**が発現しない内皮細胞シートでは、P*断片によりそのナノ粒子に対する透過性が亢進した。以上から、P*断片がP**発現細胞においてのみ、ナノ粒子に対する透過性を亢進する作用を有するという結果を得た。これらの結果から、ナノ薬剤の血管外移行を説明する分子機構として、P*断片及びその結合対象分子であるP**の内皮細胞における発現が、重要な因子である可能性が示唆された。
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