BLNK(BASH・Slp65)はB細胞受容体シグナルのアダプター分子として知られている一方、preB細胞性急性リンパ性白血病(preB-ALL)ではこの遺伝子の機能欠失型変異が少なからず報告され、B細胞におけるがん抑制遺伝子と考えられている。BlnkホモKOマウスにおいてpreB-ALLが発症するが、発症までの潜伏期間は平均314日と長く、発症にはさらなるゲノム・エピゲノム異常が加わっていると考えられる。 我々は、Blnk KOマウスにレトロウイルス挿入変異システムを適用して、BLNK欠損に協調的に働く分子としてC/EBPβを同定した。C/EBPβはLAP、LIPの2つのisoformをコードするが、LAP高発現とBlnk欠損が相乗的にpreB-ALL発症を誘導することを、Blnk KOマウスとLAP tgマウスとの交配を用いた遺伝学的解析により明らかにした。Blnk KOマウスでは、pro/preB細胞の段階において分化障害が生じるが、LAPの発現はこの分化障害をさらに強めることが観察され、ALL発症促進との関連性が示唆された。 そこで、骨髄の非腫瘍性B細胞におけるC/EBPβの標的遺伝子やBlnk欠失で発現が変化する遺伝子を網羅的に解析する目的で、マイクロアレイを用いた解析を行った。Blnk欠失によりB細胞分化関連遺伝子の大規模な発現変動が確認され、LAP発現により細胞増殖関連分子・Niche関連分子の発現亢進が加わった。Blnk欠損状態で分化に異常を誘導し、LAPの高発現が環境因子を修飾することにより、より高頻度に腫瘍を誘導する可能性が考えられた。 また、ヒトB-ALLにおいてもC/EBPβの発現は高く、BLNK欠損とC/EBPβ高発現がヒトのB-ALL発症においても重要であることが示唆される。
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