1研究の意義、重要性 ゲノムの不安定性は重要な癌制御メカニズムのひとつであり、一般的には染色体の分配機構や中心体の制御が関与していることが知られているが、動く遺伝子であるレトロトランスポゾンの影響も重要である事が示唆されている。本研究は従来法よりも短時間にハイスループットで解析が可能な手法を用いて、レトロトランスポゾンであるlong interspersed element-1(LINE-1)と発癌との関わりを解析した。はじめに、癌特異的に存在するL1を同定した。 2研究成果についての具体的内容 インバースPCR法でLINE-1の挿入位置を同定できるのでこれを利用した。申請者の研究室には大量のヒトゲノムDNA(癌と正常部位)が肺癌でそろっているのでこれらを使用した。具体的には、ゲノムDNAを制限酵素Sau3AIで切断しセルフライゲーション後、LINE-1の3’側に設定したプライマーでPCRを行った。PCR産物を電気泳動し正常と癌部位を比較し、癌特異的なLINE-1の検出を試みた。効率を上げるためゲノムDNAは異なる10サンプルを混合してインバースPCRを行った。癌と正常部のペアを合計67ペア解析したが、癌特異的なLINE-1は発見できなかった。そこで研究が計画通りに進まない場合の解決策として予定していたリンカーDNAをライゲーションする方法を試みた。この方法では同定できるLINE-1の数が増加し癌特異的なLINE-1が発見できる可能性があるが癌特異的なLINE-1は発見できなかった。
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