研究課題/領域番号 |
23790440
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 泰昌 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30403489)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 中皮腫 |
研究概要 |
マイクロアレイで同定したmicroRNA(miR)をReal-time PCR で検討した。鉄化合物誘発腹膜中皮腫の肉腫型特徴的にrno-miR-199-3p, 199-5p, 214 が過剰発現し、ISHにより腫瘍細胞にrno-miR-214 の陽性像を認めた。このrno-miR-199/214 はゲノム上でcluster を形成し、Twist1 という転写因子による転写されることが報告されている。申請者はTwist-1が肉腫型中皮腫に過剰発現をしていることを見出した。また、アスベスト誘発悪性腹膜中皮腫のパラフィン包埋切片、血性腹水から樹立した悪性中皮腫細胞株においても、Twist1 の高発現を肉腫型に認めた。Twist1 高発現中皮腫細胞株に、rno-miR-214 の過剰発現を認めた。鉄化合物誘発中皮腫とアスベスト誘発中皮腫における肉腫型中皮腫の表現型に、共通の機序が存在することが推測される。miR-199/214 の機能を解析するため、ヒト由来の不死化中皮細胞(MeT5A)にhsa-miR-199/214 を遺伝子導入し、薬剤耐性株を作成した。この薬剤耐性株は、肉腫様に大型化や紡錘形化といった形態変化は明らかではなかったが、細胞数の増加、WST-1 assay の上昇、Soft agar でのコロニー形成能の増加を認めた。また、Random migration assay で、miR-199/214 過剰発現株において、運動能の亢進を認めた。また、細胞増殖促進効果は、HeLa(ヒト子宮頚癌細胞株)、HEK293T(ヒト胎児性腎細胞)にも観察された。以上のように、培養細胞を利用した実験系において、miR-199/214 は機能性miR であることは明らかになったが、どのような標的分子が細胞機能を修飾しているかは明らかではなく、平成24年度の研究課題として残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究目標として設定した3項目では、(1)マイクロアレイで高発現が見られたmiRNAの確認と発現部位の同定、(2)Twist-1 (miR-199/214の発現を誘導する転写因子)の発現の評価、(3)機能性miR の蛋白発現抑制標的蛋白の同定、を挙げていた。項目(1)(2)では、目標をほぼ達成することが可能であった。しかし、項目(3)では標的蛋白を同定するに至っておらず、今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
Web上のデータベース(Target Scan, miroRNA.org など) では、microRNA の標的遺伝子を推測することが可能である。申請者が観察したmiR-199/214 の発現型を説明できる遺伝子候補をリストアップしており、western blot で発現量の変化を検討する予定である。また、miRはAgo 複合体に取り込まれて翻訳抑制を起こすため、miR-199/214 を過剰発現するMeT5AにAgo-mRNA 複合体を免疫沈降し、クローニングすることにより、データベースからは予測できない新しい遺伝子の発見を試みる。また、平成24年度の研究目標として、(1)マイクロアレイのデータ解析を掘り下げ、上皮型、肉腫型に共通したmiRNAの同定、(2)腫瘍の発生に重要な役割を果たしている標的蛋白の同定など、申請者の所属する研究室で蓄積されたデータとmiRNA の関連解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、microRNA を導入した細胞株の機能解析を行う。そのためには、遺伝子定量試薬、遺伝子導入試薬、抗体などの研究費が必要になる。また、培養細胞を利用した実験が主体であり、培養用血清、培地などが必要になる。平成24年度中の論文投稿を目指し、鋭意論文準備中である。そのため、研究費を大事に使用させていただく予定である。
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