研究課題
本研究の目的は、カニクイザルのiPS細胞もしくは骨髄細胞から白血病細胞を誘導し、カニクイザル白血病モデルを作製する事である。作製したカニクイザル白血病モデルは患者では試みる事の出来なかった革新的な治療法の開発に用いる事が出来ると考えられる。 当大学に存在する主要組織適合抗原複合体(MHC、カニクイザルではMafaと呼ぶ)のハプロタイプがhomozygousカニクイザルから誘導されたiPS細胞を用いて、CD34陽性造血幹細胞の誘導に成功した。このiPS細胞由来CD34陽性造血幹細胞は、メチルセルロース下でコロニーを形成し、マクロファージや多核白血球に分化できる事を確認した。また、このiPS細胞由来CD34陽性細胞に慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR/ABL遺伝子を遺伝子導入し、免疫不全マウスに骨髄内骨髄移植を行った。現在、白血病発症の有無について、経過を観察している。 Mafa homozygousカニクイザル由来iPS細胞から造血幹細胞を誘導できた事で、カニクイザル白血病モデルを作製のみならず、iPS細胞由来CD34陽性造血幹細胞とカニクイザルを用いた再生医療研究への扉を開いたと言える。理論上、Mafa homozygousカニクイザルiPS由来造血幹細胞は、Mafa heterozygousカニクイザルに拒絶反応を起こす事なく移植可能である。現在、iPS細胞由来CD34陽性造血幹細胞を免疫不全マウスに骨髄内骨髄移植し正常造血が可能かどうか経過を観察している。 また、MHC homozygousカニクイザル由来iPS細胞から造血幹細胞を誘導できた事で、この細胞からT細胞や樹状細胞を誘導する事により、マウスに比べよりヒトに近いカニクイザルを用いた免疫学的研究を行う事が出来るようになった。現在、iPS細胞由来CD34陽性細胞からT細胞の分化誘導を試みている。
3: やや遅れている
本研究の目的は、カニクイザルのiPS細胞もしくは骨髄細胞から白血病細胞を誘導し、カニクイザル白血病モデルを作製する事である。 本年度の計画では、Mafa homozygous iPS細胞を用いたCD34+造血幹細胞の誘導と造血幹細胞からの白血病細胞の作製であった。 現在までに、Mafa homozygous iPS細胞を用いたCD34+造血幹細胞の誘導に成功し、さらにその細胞に慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR/ABL遺伝子を遺伝子導入し、免疫不全マウスに骨髄内骨髄移植を行った。現時点では、白血病の発症の有無を確認できておらず、白血病細胞が作製できたとは言えない為、進捗状況はやや遅れていると考えられる。
今年度の目標は、慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR/ABL遺伝子を遺伝子導入したMafa homozygous iPS細胞由来CD34+造血幹細胞を、カニクイザルに移植する事である。 現在経過を観察している、BCR/ABL遺伝子を導入したiPS細胞由来CD34+造血幹細胞を骨髄内骨髄移植した免疫不全マウスが、白血病を発症し次第、その骨髄を採取し、今年度中にMafa heterozygousカニクイザルにそのまま骨髄内骨髄移植する予定である。 BCR/ABL遺伝子は単独で白血病を発症させる事が知られているが、もしこのBCR/ABL遺伝子導入iPS細胞由来CD34+造血幹細胞が白血病を発症しなかった場合は、急性骨髄性白血病の遺伝子であるAML1/MTG8遺伝子とFLT3mutant遺伝子を別のiPS細胞由来CD34+造血幹細胞に導入し、白血病の発症を試みる。これらの遺伝子を導入する為のレトロウイルスは既に完成している。 また、白血病細胞の移植に際して、マイナー抗原等の拒絶反応が起こる可能性は否定できない為、シクロフォスファミドなどの薬剤により骨髄破壊的な免疫抑制を行った上で、Mafa heterozygousカニクイザルに移植を試みる。
次年度は計画通りMafa heterozygousカニクイザルに白血病細胞を移植するため、カニクイザルを2頭購入する予定である。またカニクイザル移植する前の白血病形成能の検討に必要な免疫不全マウスも購入する。 またiPS細胞由来CD34+造血幹細胞を大量に作製する為に、多量のサイトカイン等の試薬が必要である事がわかった為、それらの購入を行う。
すべて 2011
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Antimicrobial Agents Chemotherapy
巻: 55 ページ: 4961-4970
10.1128/AAC.00412-11