当大学では主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の特定のハプロタイプ(Mafa-HT1)のhomozygousカニクイザルを飼育している。理論上、Mafa-HT1 homozygousサルiPS由来細胞は、Mafa-HT1 heterozygousサルに拒絶反応を起こす事なく移植可能である。山中4因子(cMYC、OCT4、KLF4、SOX2)を導入し作成したMafa-HT1 homozygousのカニクイザルiPS細胞を用いて実験を行なった。 最初にiPS細胞からCD34陽性造血幹細胞を誘導した。様々な検討の結果、胚葉体を作製した後に、最初の1週間を低酸素環境(3%O2)で培養したところ、培養2週間で効率よく分化誘導させる事が出来た。次にiPS細胞から誘導したCD34陽性細胞(以下、iCD34細胞)に既知の白血病遺伝子を遺伝子導入し白血病細胞株の誘導を試みた。AML/ETO+FLT3mutant、BCR/ABLの二つの組み合わせで行なったが、いずれもサイトカイン無添加メチルセルロース培地にて長期間培養する事が出来た。次にこれらの遺伝子導入iCD34細胞をNOGマウスに移植し、白血病を発症するかどうかを確かめた。白血病遺伝子を導入したiCD34細胞を、2Gyの放射線を照射したNOGマウスに骨髄内骨髄移植を行った。移植後12週で、カニクイザル由来細胞のキメリズムは10-20%程に達した。BCR/ABLに比べ、AML/ETO+FLT3mutant導入したiCD34細胞を移植した方が、よりキメリズムが高い傾向にあった。現在、Mafa-HT1 heterozygousカニクイザルにAML/ETO+FLT3mutant導入iCD34細胞を移植準備中である。
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