研究課題/領域番号 |
23790444
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野島 聡 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40528791)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | セマフォリン / 網膜ホメオスタシス / 網膜変性疾患 / 点突然変異 |
研究概要 |
網膜色素変性症は失明の原因として頻度が高く、社会学的に大きな問題となる疾患である。セマフォリン4A(Sema4A)はその欠損マウスが広範な網膜変性を起こすことから網膜色素変性症の原因遺伝子の一つと考えられており、実際に、ヒト網膜色素変性症においてSema4A内にいくつかの点突然変異が報告されている。本研究は、ヒト患者において報告されている点突然変異D345H, F350C, R713Qをそれぞれ有する遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成し、Sema4Aを原因とする網膜色素変性症の病態機序の解明を目標とするものである。本年度は全系統のノックインマウスの作成が完了し、いずれのマウスにおいても十分な量の変異蛋白の発現が確認できた。これらのノックインマウスの網膜組織を評価し、点突然変異F350Cを有するノックインマウスが網膜色素変性症を発症することを確認した。点突然変異D345H, R713Qを有するノックインマウスについては、網膜に異常を認めなかった。これらマウスの網膜を共焦点顕微鏡を用いて免疫組織学的に観察することにより、Sema4A F350C変異蛋白は本来の局在部位である網膜色素上皮の表層に存在できていないことが分かった。変異Sema4A蛋白を発現するプラスミド構築を用いたin vitroの実験においても、同様の結果が得られた。また、各変異蛋白について立体構造を保ったままでゲル泳動法を施行することにより、Sema4A F350C変異蛋白に高度の立体構造の異常が生じていることが示された。この立体構造異常とそれに起因する局在の異常が、Sema4Aを原因とする網膜色素変性症の病態機序の本質であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にヒト網膜色素変性症患者において認められているSema4Aにおける点突然変異について、動物実験モデルを用いて疾患原性を再現することに成功した。また、それらの原因が変異Sema4A蛋白の立体構造、局在の異常であることを示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
示唆された変異Sema4A蛋白の立体構造、局在の異常についてより詳細な解析を行う。具体的には、X線構造解析を用いた詳細な立体構造解析、共焦点顕微鏡や電子顕微鏡を用いたオルガネラレベルでの局在の評価を予定している。また、ヒトへの治療応用を想定して、生後すぐから正常Sema4A蛋白を補充することにより疾患の発症を予防できるかについて検討する。手技としては精製Sema4A蛋白の血管内投与、プラスミドベクターやウィルスベクターを用い網膜色素上皮特異的にSema4Aを発現させる方法等を予定している。治療効果が得られた際にはその最適な条件の検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額はやや異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初の予定通りに計画を進めていく。具体的には、消耗品、情報収集あるいは成果発表のための国内旅費、複写費、研究発表費用(投稿料)に用いる予定である。
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